米国オーケストラによる 映画音楽 近現代曲 コンサート探訪記

サントラファンが書く、米国オーケストラによる、映画音楽、近現代音楽演奏会探訪記録および所感。

VOL.26 ;2018年2月17日探訪 ディミトリー ティオムキン編 その2 真昼の決闘(全曲)世界初演 Film in Concert: High Noon

Tiomkin:High Noon Film in concert (complete)

Utah Symphony conducted by Gray Covington

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今回は、ティオムキンの”真昼の決闘”全曲のシネコンサートで,米国西部在オーケストラによるコンサートとなる。いくつかの点から、サントラファンとして、さらにテイオムキンファンとしては、注目度大のイベントになる故、探訪に踏み切った。まず第一に、本曲に関しては、当方知る限り、オリジナルサントラ及び小組曲の新録音CDはリリースされていたが、全曲新録音は存在せず、長尺で高音質の音楽は楽しめず、今回初めて、コンサートホールでのオーケストラ生演奏を全曲鑑賞できる機会に恵まれることになる。昨年2017年 プラハ市フィル、ニックレイン指揮による白昼の決闘”DUEL  IN THE SUN" の新録がTADLOWよりリリースされ、ティオムキンによる西部劇音楽が再注目されたことが記憶に新しい。プラハ市フィル、ニックレインのコンビは,これまでもティオムキンの新録作品をいくつか取り上げて取り上げており、親ティオムキン派と言えるだろう。このように、昨年今年とテイオムキンの西部劇音に関するイベントが続くとは、ファンにとってはありがたいことである。ところで、ティオムキンの西部劇作品の新録と言えば、過去にエルマーバーンスタイン指揮ロイヤルフィルによる、ハリウッド作曲家群の新録音シリーズ中の1枚にあった、”OK牧場の決闘”が当方にとって、最初の出会い出であり、この作品から、きわめて強烈なインパクトを受けた記憶がある。ドスの効いたボーカルに、迫力あるティオムキンの西部劇音が格調高き英国のオーケストラから奏でられる事など、当時有り得ない事であったからだ。バーンスタインが尽力して完成させた、この新録音プロジェクトは、サントラファンにとって、極めて重要なイベントであったと確信している。その心意気が、今回の”白昼の決闘”新録音、そして今回の真昼の決闘シネコンサートに継承されている様に感じる。第二点としては、今回のコンサートは、Utah Museum of Fine Arts (UMFA) が企画するGo West! Art of the American Frontier なる,ユタ州内の地域イベントの1つとして、このコンサート(楽曲)が取り上げられた様である。実質の演奏プロディースは ,以前にも言及したJhon Gobermanであることが、当日のプログラム解説で判明した。彼の取り扱う楽曲は、通好みの渋い選曲が多く、大衆性は低いが芸術性は高い作品が多い。ポピュラーな作品で集客に的を絞った、他シネコンサート団体とは、明らかに異なるし、当方好みの作品が多い。したがって、今回のコンサートも極めて特殊で、繰り返し演奏会が計画される可能性は低いと思われる。従って、探訪の価値有りと考えた。第三点は今回の演奏がUtah Symphonyであることである。サントラファンなら1度はこのオーケストラの名前を聞いたことがあるのではないかと思う。今でこそ、サントラの新録音は前述のプラハ市フィルを中心とする、ロシア、東欧勢が主流になっているが、以前は米国内でも頻繁実施されており、ユタ響においては、エルマーバースタインによるジョンウェインの西部劇作品新録音他に頻繁に起用されていたからである。このオーケストラと西部劇音楽は関係が深いのである。曲は異なるが、かつてレコード盤で繰り返し鑑賞したオケの演奏を、コンサートホールで実体験できることは感慨深い。皮肉な事に、プラハ市フィルに”白昼の決闘”で世界初新録音の機会を奪われた、老舗オーケストラが、生コンサートで”真昼の決闘”を世界初演するとは、まるで、プラハ市フィルにリベンジ(決闘?)を打ったようで真に面白い。サントラファンとしては、ユタ響が、どのような演奏するのか興味深い。西部劇の本場、アメリカ西部のオーケストラによる西部劇音楽の生演奏である。さて、演奏である。残念ながら、アカデミーを受賞した有名なテーマソングは、生歌唱では無く、サントラのボーカルが流用されており、オーケストラ伴奏部分のみ生演奏。劇中、効果的に流れるハーモニカはシンセで代用されていた。しかしながら、本編でのオーケストラ演奏を体験すると、その様な事はどうでも良い事が理解できる。特に、決闘開始時間12時に迫る緊迫シーンから、決闘および馬小屋の火災から終幕までの一気呵成の音楽に驚嘆した。この部分のために、探訪しても良いぐらいで、アカデミーを受賞した理由の1つと感じられる。映画もしくはCDで一連の流れは体験済みではあるが、コンサートホールで体験する、ティオムキン節がこれほど効果的であるとは、想像ができなかった。特に、この場面は台詞が無く音楽に全て語らせているので、その効果はコンサートホールでは格別である。ユタ響の演奏にも迫力が感じられ、西部物演奏の本家による面目躍如たる演奏といえるだろう。演奏時間は休憩なしの1時間30分弱と短時間ではあったが、内容の濃い演奏会であった。今回はソルトレークシティー在ユタ響を探訪することが主目的ではあったが、偶然、このコンサート前日、同じくソルトレーク在のバレー団(WEST BALLET) による、プロコフィエフのシンデレラ全曲、バレーコンサート(付属オーケストラによる生演奏)探訪の機会を得る事ができたので、次号で言及する。

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ホール入り口   ホール近くに、ソルトレイク名物テンプルが位置する

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Go West! Art of the American Frontier 宣伝 および ホールの様子

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会場の雰囲気

VOL.25 ;2008年10月31日探訪 フランツ ワックスマン編 フランケンシュタインの花嫁(全曲)世界初演

Franz Waxman: The Bride of Frankenstein (Complete)

World premier concert performance

Chicago symphony orchestra conducted by Richard Kaufman

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前号で言及した様に、今回はワックスマンの作品に関する、過去のコンサートについて記録を残す。コンサートは2008年10月31日、シカゴ響によるシネコンサートで、作品はBride of Frankenstein(1935)。コンサートでの全曲演奏はその日が世界初演になる。その当時、シネコンサートに関する知名度はそれほど高くなかったが、会場は満員であったと記憶する。指揮は、現在、米国のシネコンサートで超活躍中のRichard Kaufmanであった。本曲はワックスマン作品群中でも、ユニークな作品であり、前述Vol.24記載コンサートでの演奏曲Sunset Boulevardよりも古い作品ではあるが、1930年代のホラー作品として有名な一連のフランケンシュタインシリーズ第二弾作になる。これまで、チャールズ ゲルハルトおよびケネス オルウイン指揮等による新録音盤がリリースされており、音楽的にも面白い企画である。個人的は、シネコンサート形式の演奏会には、このコンサートが始めての経験であった為、長年聞き込んだ映画音楽が、シカゴ響でどのように演奏されるのか興味津々であった記憶がある。近年はワックスマン作品のシネコンサートが無く残念であるが、彼の作品には、前号で紹介したSunset Boulevard初め,A Place In The Sun, Rebecca等の往年の名作が多く存在し、今後まだまだ企画される可能性はあると考えられる。さて、演奏である。かなり過去の事ではあるが、大画面に映し出された、フランケンシュタインの映像とシカゴ響の演奏は、白黒大画面による初期ホラー画像とともに、今も、強烈な印象を残している。本作の新録音がリリースされた後、1990年代には、その後のフランケンシュタイン作品の音楽を担当した、ハンスサルター、フランク スキナーによる、続編の新録音が相継いで、ストロンバーグ指揮モスクワ響他により、リリースされたのは興味深い。

ワックスマンのサントラといえば、彼の映画音楽集の新録音を企画した、息子のジョン ワックスマンがこのコンサート企画に参加しており、休憩時、ロビーで聴衆たちと歓談できる機会が設けられていた。その時、幸運にも、当方も言葉を交わすことができた。彼に関しては、70年代から収集してきたサントラ、特にワックスマン作品の新録音盤に彼の名前がクレジットされており、興味を抱いてきた。従って、この機会に実際に本人に面会できたのは、貴重な経験であった。 その時、すばらしい映画音楽芸術の新録音活動に関して大いに感謝を表し、今後の更なる新録音活動を、お願いをした記憶がある。その時、彼は、一般にリリースされていない著名映画音楽作曲家の作品群には、表舞台に出すべき作品が多くあると述べていた事が印象に残っている。そして、その言葉どうり、現在 Theme & Variations の代表として、映画音楽作品群のスコアー管理、演奏会のプロモートに尽力されている様で、サントラファンとしてはありがたい。

本作The Bride of Frankensteinのシネマコンサートが、その後再演された事は、当方知る限りないし、ワックスマンの本格的、長尺管弦楽作品をコンサートホールで、しかもシカゴ響で鑑賞できる機会もほとんど無いかと思われる。

VOL.24 ;2018年1月13日探訪 ジェリー ゴールドスミス編 ”猿の惑星”組曲および“海流の中の島々”組曲 その他 

Goldsmith: Suite from "Islands in the Stream"

Goldsmith: Suite from "Planet of the Apes"

Tiomkin: Suite from "Big Sky"

Waxman: Suite from "Sunset Boulevard"

Rozsa: Suite from "Ben-Hur"

Others

Indianapolis Symphony Orchestra   conducted by Justin Freer

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今回は、映画音楽コンサートの探訪になる。映画音楽コンサートは概して、主題の曲の寄せ集め、ごった煮的ポップスコンサートになる傾向があり、通常は敬遠しているのであるが、今回は、好みの作曲家群の組曲が全部で5作品まとめて取り上げられており、単なるポップスコンサートではないと判断し探訪に踏み切った。管弦楽はインディアナポリス響、指揮はシネコンサートに、たびたび登場するジャスティン フリーアー。今回、第一の目玉は久々にゴールドスミス作品の組曲が2作品鑑賞できることである。今回のコンサートで演奏される全12曲中4曲はゴールドスミスの作品となっており、その中で、組曲として、“猿の惑星”組曲、および“海流の中の島々”組曲が取り上げられている。これらの組曲は、すでにゴールドスミス自身指揮のコンサートで公開済みで新規性はないが、いずれもコンサートホールでの演奏に耐えうる質の高い組曲で十分探訪に値すると考えている。

当日のプログラムによると、フリーア―はゴールドスミスに師事した経験がある様で、このため、ゴールドスミスの作品が多く採用されていると推定している。このコンサートでは、オーケストラ後方のステージ席の購入が可能である為、パーカッション群近くに陣取って観察を決めた。何故なら、ゴールドスミスの楽曲、特に猿の惑星では、パーカッションの使い方が独特で、これらの斬新な響きが、本曲の魅力である為である。真近くで見ると奏者の動きが巧妙ではあるが、かなり緊張した動きをしており、難曲であることが、理解できる。これは、フリーア―自身も演奏直前解説で述べていた事である。これだけ近傍で、この組曲を、しかもコンサートホールで鑑賞できる機会も少ないと考える。次に“海流の中の島々”組曲である。この組曲も演奏される機会は多くなく貴重である。自分的には、ゴールドスミス自身の指揮した新録LPを発売当初から愛聴してきた、好みの曲の1つで、期待が膨らむ。コンサートホールでの響きは格別で、コンサート用管弦楽作品として、十分鑑賞に値する品格が感じ取れた。組曲内で演奏されるピアノ旋律が、いかにもゴールドスミス的リリシズムを有し、好きな部分であるが、今回近傍で、そのピアノ演奏をじっくり観察でき、オーケストラ背後の席も悪くないと感じた。

次の目玉はティオムキンの“果てしなき蒼空”組曲である。この組曲は70年代リリースされた、ゲルハルト指揮ナショナルフィルの新録シリーズ中、ティオムキン編に取り上げられていた曲で、想い出深い曲である。演奏された組曲は、それと同一で、今、コンサートホールで鑑賞できたことは、真に感慨深い。

さらに、ワックスマンも好みの作曲家であるが、残念ながら、コンサートで演奏される楽曲はそれほど多くなく、管弦楽作品"カルメン幻想曲"が頻繁に取上げられる程度で、映画音楽が取り上げられることも、それほど多くない。したがって、今回“サンセット大通り”組曲が演奏される事は有難い。この曲も、ゲルハルト指揮ナショナルフィルの新録シリーズ中、ワックスマン編で始めて紹介されて依頼、魅了されてきた楽曲である。ゴールドスミスが自身のコンサートで取上げた事も理解できるし、弟子のフリーア―が、それに従った理由も十分理解できる。やはりコンサートホールで鑑賞する、本曲、特にサロメ引用の大団円は感動的である。ワックスマンの映画音楽組曲で、過去に探訪し印象に残っている作品として、ボストンポップスによるタングルウッド音楽祭において、ジョンウイリアムスが“陽のあたる場所”組曲を指揮しており、この演奏もよかった。さらに、興味深いことに、ワックスマン初期作品によるシネコンサート(フランケンシュタインの花嫁)が、シカゴ響により、かなり以前にすでに実施されており、当方、探訪している。これらの探訪記ついては次号に別記する。

最後の目玉はローザの“ベンハー”組曲である。有名曲であり、演奏され尽くしている感があるが、ローザ自身の新録盤をはじめ、繰り返し新録音が企画される曲である。最近では、プラハ市響の完全版の新録音がリリースされ、根強い人気曲である。当方としては、コンサートホールでの本曲鑑賞が今回が初めてになる。コンサートホールでの響きは、曲本来のゴージャス感をさらに倍増させると痛感した。今後ローザ作品のシネコンサートが企画されればと切望する。

以上、インディアナポリス響の演奏もよく、全体的には、好印象の演奏会であったが、自分的には、テーマ曲の演奏はすべて割愛し、その分、別作曲家の組曲作品が、もう1曲演奏されておれば最高であったと考える。ゴールドスミスの薫陶を受けた指揮者だから、アレックス ノースの作品が選定されても不思議でないし、当方としても大歓迎であったのであるが、、、

 

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 インディアナポリス ダウンタウン センターサークルよりコンサートホール(Hilbert Circle Theatre)を望む。

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 入り口にて

 

VOL.23 ;2017年12月10日探訪 メノッティー 編  Selections from Amahl and the Night Visitors

Menotti   : Selections from Amahl and the Night Visitors

Tiomkin  : Selection from Its a Wonderful Life

Others

Macomb Symphony Orchestra  conducted by Thomas Cook

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クリスマスシーズンになると、全米各地のオーケストラは、ホリデーポップスの題目を掲げ、クリスマスにちなんだ、定番のプログラムを組んでくる、一般的には、ポピュラー曲主体で、関心を抱くプログラムは少ないのであるが、1点ユニークな企画があったので、探訪した。場所はミシガン東部クリントンにある、Macomb Symphony Orchestraの演奏になる。HOLIDAY AT THE MOVIES と題しており、サントラファンとして、興味を引くコピーになっている。題目どうり、クリスマスに関係した映画と、 その音楽に関する企画になる。残念ながら、シネマコンサートではないが、解説者が映画の概要を解説後、スクリーンで映画の一部シーン上映した後、オーケストラがその映画から抜粋した組曲を演奏するものである。演目は昨年探訪のシネコンサートと同一のティオムキン Its a Wonderful Lifeが含まれるが、より興味を持ったのは、メノッティーのクリスマス定番オペラAmahl and the Night Visitorsから組曲が演奏される様で、余り演奏機会がない当該曲の鑑賞が目玉である。メノッティーは、その朋友バーバーともども、当方好みの米国作曲家である。映画音楽は書いていないが、従来の既成概念にとらわれない、興味深い題目のオペラを数多く手がけており、演奏会があれば探訪のチャンスを狙っていた。今年10月、デイトンオペラにて、The Consul の上演が企画されたので、ぜひ鑑賞したいと考えていたが、残念ながら探訪の機会を逃がしている。したがって、今回は彼の作品の生演奏を鑑賞する良い機会になる。最初に1970年代に放映されたテレビ版からいくつかのシーンがスクリーン上でプレゼンされ、そのあと、組曲の演奏になる。

組曲はIntroduction,March,Stepherds Danceからなる、声楽のない短かい組曲で、テンダーな表現が主体になっており、クリスマス的雰囲気を盛り上げていたが、10分足らずの演奏は物足りない印象は避けられなかった。次にティオムキン Its a Wonderful Life組曲である。昨年末に、シカゴ響での全曲演奏を鑑賞(vol.2 探訪記参照)しており、曲の全貌は既知であるが、今回はシネコンサートでないので、よりオーケストラ演奏に集中できると考えた。選曲は メインタイトル および 最後の部分から主に抽出しており、当方好みのダイナミックなティオムキン節は、ほとんど演奏されず、後半に現れる、クリスマス音楽を主体にした様である。マイナーオーケストラによるクリスマスイベントが主旨の演奏会であるため、サントラファンとしては、短い演奏時間にやや不満が残るが、クリスマスムードが盛り上がる中、生演奏で好みの曲を鑑賞するのも悪くない。

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 コンサートホール         入り口にて

VOL.22 ;2017年11月19日探訪 バーナードハーマン編 その3 North by Northwest LIVE (Complete) 北北西に進路を取れ (全曲) 世界初演

North by Northwest LIVE

The Cleveland Orchestra
Richard Kaufman, conductor

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今回は、”北北西に進路を取れ” 全曲のシネコンサートである。Vol.9 で言及した様に、本来は今年5月にシカゴ響で世界初演の予定であったが、技術上の問題でサイコに代替え演奏された企画が、クリーブランド響で世界初演される事になった。シカゴ響で演奏されたのなら、本作ストーリ展開上、舞台として関係してくるシカゴとの関連があり、面白い機会と考えていたが、残念ながら実現しなかった。それでも、名門クリーブランド響による、今回の世界初演は、サントラファン、ハーマンファンにとって、貴重なイベントになる。北北西に進路を取れのサントラに関しては、70年代ハーマン自身による一部曲の新録が存在したが、長尺で鑑賞できるものは無く、80年代ローリージョンソンによる長尺の新録LPがリリースされ、ほぼ全体を鑑賞できた、特にマウントラッシュモアにおける追跡シーンに付けた音楽に驚嘆させられた記憶が今でも強烈に残っており、これが、ハーマンの音楽に傾倒してきた、大きな動機の一つになっている。その後、90年代ようやく、RHINO 盤による、ハーマン指揮のサントラがリリースされた事で、全曲が鑑賞可能になり、2000年代には、マクニーリーによる未使用楽曲含めた新録でさらに、より音質の良い状態で全曲鑑賞が可能になった。しかしながら、演奏会の機会は、ほぼ皆無で、当方探訪の経験範囲では、2007年にデトロイト響による組曲演奏が唯一になる、その音響効果に改めて感動して以来(vol.9参照)是非全曲をコンサートホールで体験したいと考え、待ちに待った今、世界初演である。さて、演奏である。ホテルシーン等で流れる背景音楽(バイオリン、ピアノによる演奏)で流れる、ラグタイムジャズ風背景音楽以外は、全て、ハーマン指揮のサントラと同様に、全て演奏されていた。OVERTURE 演奏から滑り出し、前半ロジャーが犯罪に巻き込まれていく楽曲CHEERS(以下ターナーのサントラ盤での使用曲名引用)あたりから、ハーマン特有の弦楽が単調ながらも、コンサートホールでは良く捉えることができ、緊張感、不安感を高めていた、その後、楽曲THE KNIFE あたりから、オーケストラ全奏による響きが加わり、劇的展開と、うまく調和している。後半から、イブとロジャーの抒情表現が多くなる。ホールで鑑賞するハーマンの抒情音楽は実に良い。大画面画像の下では、それがヒシヒシと伝わってくる。そして、有名なコーン畑でのシーンである。タンクローリーと飛行機の衝突までは、まったくの無音であるが、これがコンサートホールでは異様な雰囲気で、ヒッチコックはこれを期待したのかも知れない。自分的には、没になったハーマンの未使用曲の方が(マクニーリーの新録盤には楽曲THE HIGHWAY として収録あり)コンサートホールでは、良い効果があったと感じる。舞台をラピッドシティーに移し、ハーマン特有のダイナミックな楽曲THE SHOOTINGでの響きも良かった。その後弦楽主体のサスペンス描写に、しばし画面に集中後、当方好みの最終部分へと進む。楽曲THE GATESでテンポアップしたあたりから、熱のこもった演奏が楽しめる。そして、いよいよ、楽曲ON THE ROCKS から,最大の盛り上がり THE CLIFF ,FINALE と進む。VOL.6でも言及した様に、 ここSEVERANCE HALL の音響効果は抜群であり、この部分の演奏は期待大である。結果は予想どうり、”弩迫力!”の1言である。大画面に映し出される、マウントラッシュモアーの絶壁とともに、楽曲THE CLIFF で炸裂する打楽器、ハーマン特有の唸り節がコンサートホール中に響き渡った。特に長年ハーマンの音楽に魅了されてきた、ハーマンファンにとっては興奮の極みであり、コンサートホールで聞く、彼の音楽は効果抜群であると再認識した次第である。ハーマンは、”蛮地の太陽”や”十二哩の暗礁の下に”で通常とは異なる楽器や楽器編成を用いる事で、独特の響き追求してきており、この山場での響きには相当考慮したに違いない。だからこそ、このような感動を生み出す事ができるのだと思う。さらに、グランドフィナーレに進んで、感動の終演となった。今回で、主要なハーマンーヒッチコック3作品、サイコ、めまい、北北西に針路を取れ、シネコンサートを全て探訪することができた。ハーマン作品には、コンサートホールでの演奏してほしい作品群(例えば、ソプラノ独唱による、サランボーのアリア付き、市民ケーン全曲演奏等々)が、まだ多数残っており、今後のシネコンサートでの演奏を、大いに期待したい。

 

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演奏会宣伝チラシ             会場の雰囲気

VOL.21;2017年11月12日探訪 ジョージ ガーシュイン編 An American in Paris 全曲

George  Gershwin: An American in Paris Live with Orchestra

Grand Rapids Symphony conducted by John Varineau

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今回は ガーシュイン:パリのアメリカ人のシネコンサートで、オーケストラによる全曲演奏である。サントラはすでに発売済みであるが、音質の良い全曲新録は無い。交響詩パリのアメリカ人は当然、無数の新録が存在するが、ガーシュイン自身が付けた、サントラ全曲をコンサート会場において、しかも大画面で鑑賞できる機会も少ないので参上した。演奏は、ミシガン西部に位置するGrand Rapids のGrand Rapids Symphony である。本企画は以前にも紹介したJohn Goberman によるもので、楽譜の復元には自身のオーケストラで数々のミュージカルCDをリリースしているJohn Wilson が担当しているとの事で、興味深い。おそらくオリジナルスコアーは散逸していたのであろう。全編、ガーシュインのシンフォニックジャズを楽しめた。演奏も巧みで、ジーンケリーのタップに見事に同調させており、不自然感はまったく無かった。レスリーキャロンに付けた音楽はバレー音楽そのもので、コンサートホールではあたかも、バレー公演を鑑賞している様な錯覚を覚えた。劇中、ガーシュイン自身のピアノ協奏曲がオーケストラにより演奏される場面が有るのであるが、これが面白い、映像に写るオーケストラを実際のオーケストラが、その前で演奏する、信に奇妙な光景である。やはり圧巻は交響詩に相当する部分、つまりジーンケリーの夢想部分においては、豪華絢爛画像と、パワー全開の演奏が炸裂し、その後に続く最期の大団円の劇的音楽による締めはコンサートホールに感動を残した。米国には、コミュニティーに支えられたオーケストラが地方に多数存在し、今回のGrand Rapids Symphony もその一つである。質の高い演奏を提供しており、今回のような貴重な映画音楽全曲演奏会を体験できる事とは、サントラファンとして誠にありがたい。

 

 

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コンサートホール入り口

 

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会場の雰囲気

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シンフォニックジャズに欠かせないドラムが前面に据えてある。

 

VOL.20;2017年11 月10日探訪 アーロン コプランド編 その2 Copland:Letter from Home

 

 Copland:Letter from Home

 Richard Rodgers: Victory at Sea Symphonic Scenario (1953)

 John Williams :Born on the Fourth of July (1989)

 Robert Kurka :Selections from the Good Soldier Schweik Suite (1956)

 Gustav Holst :Homeland from “The Planets”

 others

 Michigan Philharmonic conducted by Nan Washburn

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今回は米国退役軍人の日にちなんだ音楽題材で近現代作曲家の作品を集めたコンサートになる。以前にも取り上げたNan Washburn指揮によるもので、小編成オーケストラによる教会内コンサートである。探訪のきっかけは、コープランド作品中でも、めったに演奏機会がないLetter from Home を楽しめる他、リチャード ロジャースやロバート クルカ、ジョン ウイリアムスの作品も同時演奏されるためである。いずれも当方好みの米国近現代作曲家たちを取り上げてくれており、映画音楽、クラシックのクロスオーバー領域から、うまく楽曲を選択している。VOL13   でも言及したようにNan Washburnは、かなり映画音楽通好みの選択をする指揮者と思われ、大変ありがたい。コンサート会場には、テーマに即した米国退役軍人の方々も多数訪問されており、日本人である当方としては、やや、居難い雰囲気が感じられたが、偉大な芸術を創出してくれた作曲家に敬意表す意味でも、参加させていただいた。まずは、リチャード ロジャースのVictory at Sea である。この曲は多くの新録が出ており、よく知られた曲であるが、コンサートで鑑賞できる機会は米国外ではまずないであろう。戦争ドキュメンタリー音楽では有るが、15分程度の組曲形式にまとめられたSymphonic Scenario は海洋物映画音楽の典型で十分聞き応えがある。ミュージカル作品で有名なロジャースが、このような作品を手がけていたのは、興味深い。ウイリアムスのBorn on the Fourth of Julyも演奏機会が少ない作品で、哀愁を誘うトランペットがホールに響き感動的で、劇的表現の弦楽も忘れられない。ウイリアムス作品中でも目立たないが、初期作品にある独特の響きを感じ取れる、隠れた名曲。ロバート クルカも米国近代作曲家でも演奏機会が少ない方かと思うが、the Good Soldier Schweik Suite は比較的演奏される機会がある。今回初めてコンサート鑑賞できたのは良かった。クルカの作品としては、よりダイナミックな演奏が楽しめる交響曲2番等の管弦楽作品の方が当方の好みではある。ホルストのジュピターは、少女合唱が教会内のホールで、実に良い効果を生み出していた、それにしてもホルストのジュピターの旋律は何度聴いても感動的で本当に良い曲だと痛感する。最期にコープランドのLetter from Home である。これまでのコンサートでは鑑賞経験のない貴重な機会である。故郷を思う、叙情感傷表現をコープランド特有の管弦楽が巧みに表現しており、感動を与える。映画音楽HeiressやDown a country lane等に共通する響きを有している。彼のダイナミックな音楽も良いが、このような表現がうまいのも、彼の魅力である。

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会場の雰囲気 教会内のホール。少女合唱団が見える。