米国オーケストラによる 映画音楽 近現代曲 コンサート探訪記

サントラファンが書く、米国オーケストラによる、映画音楽、近現代音楽演奏会探訪記録および所感。

VOL.15;2008年8月9日探訪 ロン ジョーンズ編 その2 STAR TREK :THE NEXT GENERATION SUITE

 

1.THE ASCENT :WORLD PREMIER OF A NEW ORCHESTRAL WORK DEDICATED TO THE LIFE AND CREATIVE WORK OF GENE RODDEN BERRY

2.STAR TREK :THE NEXT GENERATION SUITE

LAS VEGAS PHILHARMONIC  CONDUCTED BY RON JONES

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 前回のVOL.14で言及した様に、今回もロン ジョーンズに関する、演奏会であるが、過去(2008年)のコンサートについて記録する。前回紹介同様、このコンサートも、スタートレック、2008年度コンベンション中、目玉企画の一つであったと記憶する。コンベンション会場であるヒルトンホテル内の演奏会場にラスベガス響を配し、associate conductorである Richard McGee が ゴールドスミス、ホーナー、ローゼンマン 、マッカーシー、クーリッジ 作曲のテーマ曲のみ演奏し、特別企画として、ジョーンズが表題の2曲を指揮した演奏会である。やはり目玉はジョーンズの指揮、楽曲で1曲は世界初演になる、ジーン ロッデンベリーの功績を讃えた小品とThe next generation組曲であろう。小生もそのために参上したのである。2008年当時は、FILM SCORE MONTHLY より、後にリリースされた、 THE RON JONES  PROJECT ー彼が作曲したTHE NEXT GENARATION 向けのサントラ全曲集ーが発売される前で、スタトレ関係で彼の楽曲が、唯一鑑賞できるCDは、CRESCEND から発売されていたTHE BEST OF BOTH WAORLDS および、INTER PLAYから、ゲームと同時発売された、ゲーム音楽STAR FLEET ACADEMY のみで、彼の作品を生で鑑賞出来る、このコンサートは超期待大であった。当日のサイン会で、彼に直接会える機会があり、持参した前述の2枚の愛聴CDにサインを頂き、よい記念となった。この時、彼との歓談で、彼が作曲した秀逸なサントラ、特にNEXT GENARATION シリーズがリリースされないのは、極めて残念だと彼に吐露したのであるが、当然、彼からは、前述の全集リリース予定の話は全く無く、CDが出ればいいのにね、、、とお茶を濁した回答を受けたのを記憶している。今から考えると、おそらく、その時点で全集の話は決まっていたのでは?と推定する。さて、当日演奏された15分程度の組曲は、2部構成で、第一組曲はエピソード11001001及び、where no one has gone before から抽出 、第二組曲はエピソードskin of evil からターシャのエレジー(原曲はtashas goodbye)から抽出された組曲に構成され演奏されたと記憶する。いずれも、彼が提供した音楽の肝を抑えた内容になっており、たいへん満足できる内容であった。次にThe Ascent であるが、これは、ロッデンベリーの功績を讃える為に、この時のコンベンションのために、ジョーンズが特別に書き下ろした小品で6分程度の演奏で、同時にスライドでロッデンベリーの功績を記したスナップがデモされながら、演奏されたもので、弦楽を主体にした導入から、次第にフルオーケストラによる全奏で盛り上げた、構成はよくできておりスライドの内容とよく合った印象的な音楽であった。ベガス響の演奏が今一つであったので、ぜひ再演奏の機会があれば、と思う。

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演奏会場(ラスベガス ヒルトンホテル)の雰囲気

 

VOL.14;2017年8月5日探訪 ロン ジョーンズ編 Live in concert by Ron Jones and the influence jazz orchestra

 

今回の演奏会は、管弦楽団ではないので、番外編になる。ラスベガスで毎年恒例の企画であるスタートレック  コンベンションの特別企画として、久々にロン ジョーンズが、登場したので、参上した。久々とは、2008年にも、同様企画に登場し、ラスベガス響で、きわめて珍しい、自作作品を自ら指揮、初演しているからだ。当方は、その時も参上したので、次号で詳細を詳述する。スタトレに関しては、初代シリーズに、クーリッジ、ダニング、フィールディング、カプラン、スタイナー等々の傑出した作曲家群が、質の高い音楽を提供しており、これまで、何度か新録が発売されることで、一部を鑑賞することが可能になり、その音楽に魅了されてきた。その後テレビ版に関しては、NEXT GENERATION の放映に伴い、マッカーシー、ジョーンズ、チャッタウエイ等が音楽を引き継ぐ訳であるが、自分的には、ジョーンズが好みである。ハーマンと共通する、自己の音楽哲学に固執する姿勢に一味違う何かを感じためである。 この姿勢ゆえに、シリーズ途中で降板する事になったと推定するが、残念なことである。その後、彼が得意とする、アニメ音楽領域に帰着し活動を継続しており、最近は、航空宇宙関係ドキュメンタリー番組に音楽を提供する等、地道な努力が見て取れる。

さて、今回は、彼が企画するジャズオーケストラを率いての登場で、彼の管弦楽曲を楽しめないのは、残念であるが、ビッグバンドを、どの様に操るか興味深い。このジャズオーケストラは、状況により、弦楽を加えて管弦楽団にも変容する様で、将来機会があれば、鑑賞したいと考える。彼は極めて広範囲の音楽を提供できる様で、管弦楽作品から、ジャズ、ヒップホップに至るデモを自身のサイトでプレゼンしている。残念ながら今回の演奏会では、彼のオリジナルは聞くことができず、スタトレのテレビ版各エピソードで、歌声を披露した面々が、自慢の喉を披露する為の、裏方演奏に徹した様である。スタトレのコンベンションであるが故、当然といえば当然であるが、今回は、作曲家としてのジョーンズではなく、指揮者、エンターテイナーに徹し、コンサートを盛り上げていた。演奏会後、サインを求めるファンが多数おり、根強い人気が伺えた。過去にはMission impossible 88-89に、シフリンの楽曲を基にしたジャズ劇音提供も経験しており、今後同様なジャズ関連の新作を期待したいところである。ところで、この演奏会とは、直接関係ないが、サントラ関係の話題として、記録したい内容として、コンベンション中、The next generation のエピソードの一つ、Inner light にフォーカスした、プレゼンがあった。このエピソードでは、チャッタウエイが手掛けた楽曲が効果的で、CDもリリースされているが、今回のプレゼンに際し、特別に導入部分が単独演奏され、彼の音楽を称賛していた事が印象に残る。また、イベントの目玉の一つで、スタトレグッズの販売会が催されているのであるが、その中で、スタトレを始めとする、SF関係サントラのユニークな企画で注目される、サントラレーベルLA -LA -LANDのブースがあったので、立ち寄ってみた。目当ては、スタトレ、オリジナルシリーズ全曲集である。高額故、これまで、敬遠していたのであるが、今回の訪問を記念して、購入を決断した。そこでLA -LA -LAND関係者と歓談でき、当該レーベルに関する事や、今後期待したい企画、等々意見を交わす事ができた。当方個人の意見として、Voyage to the bottom of the sea 全集発売を力説しておいた。今後も当該社の活躍に期待したい

 

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入り口にて       会場の雰囲気

 

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会場内の展示  ーフィールディングの音楽が印象的なシーン

 

VOL.13;2017年7月15日探訪 エルマー バーンスタイン編 To Kill a Mocking Bird Suite

 

Elmer Bernstein;To Kill a Mocking Bird Suite 

James Horner ;Highlights from "Titanic"

Alan Silvestri ;Back to the Future Suite

Hans Zimmer  ;Music from Gladiator

others                  

Michigan philharmonic conducted by Nan Washburn

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今回の探訪は映画音楽に特化した野外演奏会である。米国では夏場、野外コンサートが頻繁に実施され、映画音楽が演奏される事も珍しくない。演奏内容も万人向け、主題曲の寄せ集め式ごった煮コンサートになる傾向があるが、今回はバーンスタインのアラバマ物語組曲の演奏が含まれているので、参上した。同時演奏される比較的ポピュラーな曲中に、通向けの1曲が配されているのは興味深い。当方にとっても、アラバマ物語は、バーンスタインの作品中で1番の好みであり、1970年代にロイヤルフィルを使った全曲新録音盤を繰り返し愛聴しており、ぜひ生演奏を体験したいと考えていたので、絶好のチャンスである。今回使用された譜面は公開済みの8分程度の組曲を使用していると推定する。指揮者Nan Washburnの解説によると、バーンスタインは彼女の好みの作曲家との事で、なぜ、バーンスタインの曲が含まれたのか理解できた。野外なので音響効果は、期待できなかったが、公園内、湖の横の配置された演奏会場は抜群の環境で、しかも実質無料(公園入場料のみ)である事は、驚きである。

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会場のKensington Metropark    リラックスした雰囲気で音楽を堪能  

VOL.12;2017年6月30日探訪  ジョン ウイリアムス編 その2 JOHN WILLIAMS JAWS FILM WITH ORCHESTRA

JOHN WILLIAMS   JAWS     COMPLETE FILM WITH ORCHESTRA  CHICAGO SYMPHONY ORCHESTRA CONDUCTED BY RICHARD KAUFMAN -----------------

 前回に続き、シカゴ響によるウイリアムスJAWS全曲演奏 のシネコンサートである。同月内にウイリアムスの作品が2回(当方ブログvol.11参照)も、しかもシカゴ響で演奏されることは、めったにないと思われる。ところでシネマコンサートであるが、当方知る限り、現在3つのメジャーな団体が個別のシネコンを企画しており、今回はその1つの団体で、昨年日本でもウイリアムスのETおよびインディアナジョーンズのシネコンを手掛けた団体と思われる。今回のJAWSシネコンはボストン響が世界初演を済ませたばかりで、世界で第2回目の演奏がここシカゴ響と理解している。JAWSのサントラは、映画リリース当初からレコード盤および初期CDで短い30分程度が公開されていたが、その後、全曲盤がいくつかリリースされ全体を鑑賞することができるようになった。今回は聞きなれたサウンドトラックCDの音がコンサートホールでどの様に響くのか、シカゴ響が、どのような音を出してくれるのか、きわめて期待が大きいコンサートである。さて、第一印象であるが、当然、CDとの違いは、ある程度予想していたのであるが、予想以上に良かった。通常は、ステージ近くに陣取り、弦楽器群の音に着目するのであるが、今回はオーケストラ全体を鳥瞰できる後方に位置したためか、後方に配置する打楽器群の圧倒的響きの反響がダイレクトに感じ取られ、予想外のインパクトを受けた。かなり熱のこもった演奏だと思う。サントラ全曲(Intrada)盤11曲目out to sea を境に休憩が入り、いよいよサメとの対決が始まる後半最初の山場、Man against beast に相当するところの演奏は特によかった。サントラ盤でも、収録曲最長の5分強で変化に富んでいるが、上述のとうり、cdでは、あまり印象になかった、打楽器の迫力に圧倒されると共に、ダイナミックな演奏を肌で感じることが出来た。その後、一気呵成にエンディングまで緊迫感のある演奏が続き、改めて生演奏の良さを認識した。リマスターとは言え70年代の録音が頭に残っているので、実際の演奏は全く別曲の様な新鮮さがある。サントラファンとして、このような形で映画音楽が再評価されることは、感慨深く、今後の更なる展開を期待したい。

 

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 コンサートホール入口

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会場の雰囲気ー後方に位置した方が、音響効果良い印象有。

 

 

VOL.11 ;2017年6月15日探訪  ジョン ウイリアムス編  JOHN WILLIAMS ESCAPADE FOR ALTO SAXOPHONE AND ORCHESTRA FROM CATCH ME IF YOU CAN

 

WILLIAMS : ESCAPADES FROM CATCH ME IF YOU CAN

M.WAGNER : PROCEED,MOON FANTASY FOR ORCHESTRA

DEBUSSY :IBERIA FROM IMAGES FOR ORCHESTRA

OTHERS

CHICAGO SYMPHONY ORCHESTRA CONDUCTED BY SUSANNA MALKKI

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今回はシカゴ響による、ジョン ウイリアムスの楽曲である。この組曲は、すでに複数回演奏され、譜面が公開されており、珍しくないのであるが、シカゴ響としては初演であり、シカゴ響+コンサートホールでの響きを是非体験したく、参上した。面白いのが、今回のプラグラム編成である。クラシック楽曲が、主体になっているの中に(といっても、近現代の作曲家であるが、)堂々、映画音楽からの組曲が肩を並べて登場している。しかも、選曲が、あえて、SFやパニックもの以外から採用されている所がポイントである。ここから、シカゴ響および聴衆のウイリアムスに対する評価を窺い知ることができる。これはシカゴ響だけの特有現象ではないが、シカゴ響とウイリアムスの関係の良さは、シカゴ響による、映画リンカーンのサントラ録音や、その他組曲集( Memoirs of a Geisha for Cello and Orchestra 他 )のCD録音実績からも理解できる。実際、当方も、ウイリアムス指揮、シカゴ響による、当該CD収録曲の演奏会(演奏会場での録音?)に参上しており、特に当該組曲はYO-YO MAがチェロ奏者として(現在はシカゴ響のcreative consultantに任命されている)参画しており非常に良い演奏であった事が、今でも記憶に残っている。さて今回の楽曲であるが、アルトサックスを主体としたジャズアンサンブルとオーケストラの絡み合いが、ユニークな構成になっている。3楽章からなる20分弱の組曲であるが、ウイリアムスのポップな一面を(ジャズとの融合)観察できる。当方好みは、最終楽章 (Joy Ride)である。ややジャズ色は低くなるが、彼特有のオーケストレーションが十分楽しめる。コンサートホールでの響きは格別であった。ところで、今回アルトサックスの奏者はVol.8 で紹介した、GABRIEL PROKOFIEV (プロコフィエフの孫)作CONCERT FOR SAXOPHONE AND ORCHESTRAの演奏 で登場した、BRANFORD MARSALIS が担当していた。今回参上の主目的はウイリアムスであるが、現代曲の演奏も実施されていたので、記載する。作曲家は MELINDA WAGNER , 1957年生まれの米国の作曲家で、今回の作品PROCEED,MOON FANTASY FOR ORCHESTRA はシカゴ響の委託の世界初演となる。米国は女性の作曲家が多く活躍しており、彼女もその一人である。実際当方もELLEN TAAFFE ZWILICH やJOAN TOWER 等注目している女性作曲家があり、演奏会があれば、ぜひ参上したいと考えている。さて、WAGNERであるが、作風はかなりアブストラクトな不響表現が主体のオーケストレーションの印象が強い。当方の印象では、あえて、映画音楽作曲家を上げると、レナード ローゼンマンの初期作品である、映画 COBWEB やEDGE OF THE CITY の音楽に類似した表現を連想した。

 

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 演奏会場 入り口にて

VOL.10 ;2017年6月3日探訪  レナード バーンスタイン編 その2 LEONARD BERNSTEIN WEST SIDE STORY COMPLETE FILM WITH ORCHESTRA

 

LEONARD BERNSTEIN    WEST SIDE STORY  ( COMPLETE ) CLEAVELAND ORCHESTRA CONDUCTED BY BRETT MITCHELL  ----------------------------------------

クリーブランド響は3月にバーンスタインの映画音楽、波止場組曲の演奏会を実施したばかり(探訪記VOL.6  参照)であるが、今回はなんと、WEST SIDE STORY  シネコンサート。スコア―の全曲をクリーブランド響の生演奏で、しかも大画面で楽しめた。サントラ、組曲からは聞けないすべての演奏を鑑賞できる貴重な経験である。組曲でも、お馴染み、冒頭のオープニングからホイッスル音に伴う警察官登場までの一気呵成かつパワフルな演奏に度肝を抜かれた、VOL.6にも述べたが、BRETT MITCHELL  の手腕もあるだろうが、クリーブランド響+SEVERANCE ホールの音響効果は抜群で想像以上に迫力満点である。大画面で繰り広げられるジェローム ロビンスの振り付けによるクールなダンスと管弦楽が完全にシンクロしており、まるで生のバレー公演を鑑賞している様な感覚である。その後、歌唱の部分に関しては、オリジナルの音声に管弦楽を合わせており、かなり指揮が難しかったと想像する。パワフルな演奏だけではなく、悲劇のエンディングまでの演奏効果は抜群で圧倒的な感動を覚えた。素晴らしい演奏(いや、バーンスタインの音楽自体も素晴らしい)と映像が与える相乗効果が大きいことを再認識した。シネコンサートがバレー、オペラ同様、舞台芸術の1分野として確立できる可能性を感じ取れた。同時期に作曲された、波止場のスコア―と類似した響きを聞き取ることができるが、シェークスピアのロミオとジュリエットを素材にしたストーリー展開と舞踏に関連した音楽作品としては、むしろプロコフィエフのバレー音楽ロミオとジュリエットと比較するほうが興味深い。波止場同様、ジャズを多用した音楽表現は、プロコとは全く異なるが、劇的な悲劇の終幕に関しては、表現方法こそ異なるが,共通する心理表現を感じた。バーンスタインがプロコのバレー音楽、ロミオとジュリエットを意識したのは、確かだと想像する。

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会場の雰囲気(SEVERANCE ホール)

VOL.9: 2017年 5月26日 探訪 バーナード ハーマン編 BERNARD HERRMANN PSYCHO WITH ORCHESTRA(COMPLETE)

 

BERNARD HERRMANN   PSYCHO  WITH ORCHESTRA(COMPLETE)

CHICAGO SYMPHONY ORCHESTRA CONDUCTED BY RICHARD KAUFMAN

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今回の探訪は、シカゴ響によるバーナードハーマン作品の演奏会である。ハーマンは、自己の芸術性に妥協を許さない音楽哲学を踏襲しており、また音楽を提供した映画の特異性からも、以前から興味を引かれ、自己の鑑賞歴の中でも重要な作曲家の一人となっている。10年ほど以前は、頻繁にハーマン作品の演奏会、新録音が続いていたが、最近は一段落した感がある。その中で、今回シネコンサート形式のサイコ全曲の演奏である。実は今回の演奏会は本来”北北西に針路を取れ”の全曲演奏であったが、技術的問題で(指揮者KAUFMANによる冒頭の説明によると、オーケストラと画像のシンクロに困難なところがあと釈明していた)急遽変更された経緯がある。当方知る限り、サイコ全曲および組曲の演奏会は世界各所で実施例が多いが、”北北西に針路を取れ”の全曲演奏会は極めて異例と思われる。当方10年ほど前に、北北西の組曲演奏会鑑賞(詳細は後に別記)経験はあるが、全曲演奏の鑑賞経験は無い。本作品は映画後半、マウントラッシュモアで繰り広げられるアクションシーンの音楽がドラマティックかつ効果的で、この部分をシカゴ響の金管、打楽器群で、ぜひ鑑賞したいと、楽しみにしていたので極めて残念である。せめて、”めまい”全曲(すでに、シカゴ響で全曲演奏済み)で代替してほしかった。しかしながら、サイコ全曲演奏をコンサートホールで、しかも、シカゴ響で体験できる機会も希と(実は、本曲に関しても、シカゴ響で演奏済みであるが、これも、鑑賞機会を逃がしている)考えられる。全曲の新録音は1970年代にユニコーンレベルでハーマン自身の指揮が最初と記憶する。それ以後いくつかの新録はリリースされており、弦楽による、恐怖表現の巧みさは実感済みであるが、映像+弦楽+コンサートホールの状況では、どのようなものなのか、確認する良い機会であった。自分でも驚いたのであるが、恐怖を駆り立てる音楽のはずであるが、それよりも、音響効果、演奏技術の相乗効果からか、映画音楽、劇音楽を超え、研ぎ澄まされた、極めて精妙な詩的な響きを感じ取った。シカゴ響の奏でる音は、いや、ハーマンのオーケストレーションの巧みさがそう感じさせるに違いないと思う。ちょうど、監督リドリー・スコットがゴールドスミスが付けたエイリアンの楽曲を極めて詩的だと表現していた、まさにその感覚である。練り上げられた音楽とは、例え恐怖表現であろうと、奥深さ、精妙さ、を有しており、これが感動を生み出す源と実感した。本作サイコは明らかに、音楽の領域でも、単なるホラー映画 を超越した芸術性を有している事は疑いない。ちょうど、演奏会前のレクチャー時、数々のシネコンサートを手掛けている、プロデューサーJohn Gobermanが登場し、弦楽のためのシンフォニエッタ-1935年作品からサイコ楽曲の素材が一部引用されている事について言及していた。(言及はなかったが、実際はさらに、その後のタクシードライバーのエンディングにも引用されている)当方も当該cd保有し、内容把握していたので、話があるのではと、想定していた。当該cdのライナーノートによると、35年当初、若年のハーマンはシエーンベルグやアバンギャルドに傾倒しており、その影響が、この作品に見られる。その抽象性が複雑な心理表現とマッチしたと推定する。

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当日は雨で、サイコの鑑賞には、最適?。劇中、マリオンが雨の中、車でベーツモーテルに向かうシーンを連想した。

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会場の雰囲気。弦楽のみ、スクリーンは、白黒。

 

 

別記: 今回のハーマン演奏会に関連し、10年ほど過去になるが、当方が参上した中で印象に残っているハーマン作品演奏会の感想を、いくつか記録に残しておく。古い情報であるが、その後、再演、新録音等されていないレアーな楽曲もあるので記録に値すると考える。

1.2007年10月6日

Lyn Murray  ; Suite from To Catch a Thief

Dimitri Tiomkin ; Suite from Stranger on a Tain

                         ; Suite from Dial M for Murder

Bernard Herrman ; Suite from North by Northwest

Detroit symphony orchestra conducted by Constantine Kitsopoulos

この演奏会はヒッチコック作品に主題をおいた演奏会になっており、ハーマンの北北西組曲が最後に配されている。この演奏会の特徴は、映画音楽関連のコンサートに良く見られる、複数映画の主題曲もしくは、2曲程度を、ごった煮的に並べる形式とは異なり、各映画から数曲抽出し、全て10分間程度の組曲形式に編纂しており、独立した音楽作品として十分鑑賞に値するレベルに仕上げていた事である。このような演奏会は、なかなか見られない、当方の自論は、ごった煮的演奏会では、芸術性のある作品の全貌を表現できておらず、軽音楽程度の印象しか得られないと考える。今回は3名の作曲家が担当した各映画から組曲を抽出演奏しており、十分納得できる構成になっている。表記の演目からもわかる様に、一番の目玉はティオムキンの作品が2作品それも10分程度の組曲で演奏される事であろう。Stranger on a Tain の組曲は、80年代ヒッチコックにフォーカスした新録がバレーズからリリースされてから(これは今でも愛聴している)いくつか、それと同様の新録がリリースされており、その中にDial M for Murderも含まれていたと記憶する。私的には、この演奏会がティオムキンの組曲作品を本格オーケストラで、しかも演奏会形式で鑑賞した、最初の経験であり、非常に興奮したことを記憶している。次に、ハーマンの”北北西の針路を取れ”であるが、本作は80年代からハーマン自身の組曲新録、ローリージョンソンの全曲新録を皮切りに新録が数多く実施されており、曲の全容は把握していたが、コンサートホール内で響の体感は格別であった。この組曲にもマウントラッシュモアでの音楽が配されており、最大の聴き場であることが理解できる。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                        

 2.2008年1月19日

Elmer Bernstein ;The Magnificent Seven

Max Steiner ;Gone with the wind

Alex North ;Suite from Streetcar Named Desire

Bernard Herrmann ;Suite from Vertigo , Overture to Citizen Kane

Leonard Bernstein; Symphonic Suite Onthe Water front

Miklos Rozsa; Ben-Hur

Others

 Minnesota Orchestra conducted by Osmo Vanska

この演奏会は前述の如く、ごった煮感はあるが、当方好みの作曲家、ハーマン、ノース、バースタインの組曲をしっかり組み入れており、特に、ハーマンの”Vertigo”およびノースの”Streetcar Named Desire”組曲の演奏機会は、当時殆ど無く、貴重な体験である。私的には、”めまい”はハーマン作品の中でも出色の傑作と考えており、スコティー、マデリン間の情緒表現、魔夢を表現する緊張感と大団円を締めくくる、劇的表現等、正統オペラと比べても、十分伍する芸術性がある。(実際ハーマンはワグナーの楽劇トリスタンとイゾルデを意識して作曲していたとの事)オペラといえば、ハーマンは嵐が丘を完成させているが、この作品は、この演奏会が実施された、ミネアポリスに一時住みつき、ここで作曲した様だ。生前十分評価されなかった作品ではあるが、作品誕生の地で、その後、再演されたことは(2011年、ミネアポリス オペラで再演)興味深い。残念ながら、当方参上の機会を逸している。以前2007年に、クリーブランドオーケストラでも、演奏会が予定され参上する計画であったが、大雪で公演が中止となり、たいへん落胆した覚えがある。

 

 3. 2008年3月24日

Peter Child ; Down-Adown-Derry-A Fairly suite for Orchestra

George Tontakis ; Violin Concert No.1

Bernard Herrmann ;Melodram for narrator and orchestra  

                                 A Shropshire Lad , The City of Brass from The Arabian Night

                               Nocturne and Scherzo

                                 Overture to "North by North west"

Albany Symphony Orchestra conducted by David Alan Miller

 この演奏会が私的には、最も印象深い。何故なら、ハーマン作品でも、超レア―な作品、30年代ラジオの音楽つき朗読劇を生のオーケストラ演奏会で2曲、鑑賞することができたことである。音質の悪い録音は、一部公開されていたが、新録は当然無く、全貌は不明であったが、この演奏会で明らかになった。A Shropshire Ladは後の映画The Kentuckianに引用されている。The Kentuckianに関しては、すでに新録が2回されており、主題曲につては、すでに馴染みの内容であるが、本曲はその主題の一部を引用、その後、ハーマン特有の牧歌的抒情表現と朗読が効果的に続く。The City of Brass はこれとは対照的にハーマンのダイナミズム表現が炸裂する逸品である。冒頭の主題はJason and The argonauts のTriton や,7th voyage of Sinbadの一部に転用された原曲であり、両映画に共通する異国情緒かつミステリアスな雰囲気と劇的展開を凝縮して楽しめる構成となっていた。最後にNocturne and Scherzoであるが、この作品も、録音がない、超レア―作品である。前半のNocturne は小品Silent Moonに見られる夜想を共通素材としおり、ハーマン特有の情緒表現を、さらに楽しむことができる。後半のScherzoは、Jason and The argonauts のScherzo macabre に転用されており、ほぼ同一の印象を受ける。最後は北北西のOvertureで締めくくった。ハーマン音楽を十分堪能できる素晴らしい演奏会であった。