米国オーケストラによる 映画音楽 近現代曲 コンサート探訪記

サントラファンが書く、米国オーケストラによる、映画音楽、近現代音楽演奏会探訪記録および所感。

VOL.21;2017年11月12日探訪 ジョージ ガーシュイン編 An American in Paris 全曲

George  Gershwin: An American in Paris Live with Orchestra

Grand Rapids Symphony conducted by John Varineau

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今回は ガーシュイン:パリのアメリカ人のシネコンサートで、オーケストラによる全曲演奏である。サントラはすでに発売済みであるが、音質の良い全曲新録は無い。交響詩パリのアメリカ人は当然、無数の新録が存在するが、ガーシュイン自身が付けた、サントラ全曲をコンサート会場において、しかも大画面で鑑賞できる機会も少ないので参上した。演奏は、ミシガン西部に位置するGrand Rapids のGrand Rapids Symphony である。本企画は以前にも紹介したJohn Goberman によるもので、楽譜の復元には自身のオーケストラで数々のミュージカルCDをリリースしているJohn Wilson が担当しているとの事で、興味深い。おそらくオリジナルスコアーは散逸していたのであろう。全編、ガーシュインのシンフォニックジャズを楽しめた。演奏も巧みで、ジーンケリーのタップに見事に同調させており、不自然感はまったく無かった。レスリーキャロンに付けた音楽はバレー音楽そのもので、コンサートホールではあたかも、バレー公演を鑑賞している様な錯覚を覚えた。劇中、ガーシュイン自身のピアノ協奏曲がオーケストラにより演奏される場面が有るのであるが、これが面白い、映像に写るオーケストラを実際のオーケストラが、その前で演奏する、信に奇妙な光景である。やはり圧巻は交響詩に相当する部分、つまりジーンケリーの夢想部分においては、豪華絢爛画像と、パワー全開の演奏が炸裂し、その後に続く最期の大団円の劇的音楽による締めはコンサートホールに感動を残した。米国には、コミュニティーに支えられたオーケストラが地方に多数存在し、今回のGrand Rapids Symphony もその一つである。質の高い演奏を提供しており、今回のような貴重な映画音楽全曲演奏会を体験できる事とは、サントラファンとして誠にありがたい。

 

 

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コンサートホール入り口

 

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会場の雰囲気

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シンフォニックジャズに欠かせないドラムが前面に据えてある。

 

VOL.20;2017年11 月10日探訪 アーロン コプランド編 その2 Copland:Letter from Home

 

 Copland:Letter from Home

 Richard Rodgers: Victory at Sea Symphonic Scenario (1953)

 John Williams :Born on the Fourth of July (1989)

 Robert Kurka :Selections from the Good Soldier Schweik Suite (1956)

 Gustav Holst :Homeland from “The Planets”

 others

 Michigan Philharmonic conducted by Nan Washburn

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今回は米国退役軍人の日にちなんだ音楽題材で近現代作曲家の作品を集めたコンサートになる。以前にも取り上げたNan Washburn指揮によるもので、小編成オーケストラによる教会内コンサートである。探訪のきっかけは、コープランド作品中でも、めったに演奏機会がないLetter from Home を楽しめる他、リチャード ロジャースやロバート クルカ、ジョン ウイリアムスの作品も同時演奏されるためである。いずれも当方好みの米国近現代作曲家たちを取り上げてくれており、映画音楽、クラシックのクロスオーバー領域から、うまく楽曲を選択している。VOL13   でも言及したようにNan Washburnは、かなり映画音楽通好みの選択をする指揮者と思われ、大変ありがたい。コンサート会場には、テーマに即した米国退役軍人の方々も多数訪問されており、日本人である当方としては、やや、居難い雰囲気が感じられたが、偉大な芸術を創出してくれた作曲家に敬意表す意味でも、参加させていただいた。まずは、リチャード ロジャースのVictory at Sea である。この曲は多くの新録が出ており、よく知られた曲であるが、コンサートで鑑賞できる機会は米国外ではまずないであろう。戦争ドキュメンタリー音楽では有るが、15分程度の組曲形式にまとめられたSymphonic Scenario は海洋物映画音楽の典型で十分聞き応えがある。ミュージカル作品で有名なロジャースが、このような作品を手がけていたのは、興味深い。ウイリアムスのBorn on the Fourth of Julyも演奏機会が少ない作品で、哀愁を誘うトランペットがホールに響き感動的で、劇的表現の弦楽も忘れられない。ウイリアムス作品中でも目立たないが、初期作品にある独特の響きを感じ取れる、隠れた名曲。ロバート クルカも米国近代作曲家でも演奏機会が少ない方かと思うが、the Good Soldier Schweik Suite は比較的演奏される機会がある。今回初めてコンサート鑑賞できたのは良かった。クルカの作品としては、よりダイナミックな演奏が楽しめる交響曲2番等の管弦楽作品の方が当方の好みではある。ホルストのジュピターは、少女合唱が教会内のホールで、実に良い効果を生み出していた、それにしてもホルストのジュピターの旋律は何度聴いても感動的で本当に良い曲だと痛感する。最期にコープランドのLetter from Home である。これまでのコンサートでは鑑賞経験のない貴重な機会である。故郷を思う、叙情感傷表現をコープランド特有の管弦楽が巧みに表現しており、感動を与える。映画音楽HeiressやDown a country lane等に共通する響きを有している。彼のダイナミックな音楽も良いが、このような表現がうまいのも、彼の魅力である。

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会場の雰囲気 教会内のホール。少女合唱団が見える。

 

 

Vol.19:2017年10月5日、6日 ジョン ウイリアムズ編その3 Return of the Jedi , Force Awakens ジェダイの帰還、フォースの覚醒 全曲 世界初演 (World Premiere-score performed live to complete film)

 

Star Wars: Return of the Jedi , Force Awakens (World Premiere-score performed live to complete film)

New York Philharmonic conducted by David Newman

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今回はニューヨークフィルによるスターウォーズのシネコンサートシリーズから2作、Return of the Jedi, The Force Awakens世界初演の探訪を試みた。この企画は、スターウォーズのシネコンサート全4作New Hope , The Empire Strikes Back 、Return of the Jedi 、 The Force Awakens順次公演するもので、ニューヨークフィルが4作品、全曲世界初演し、その後全米各地および全世界でコンサートが順次計画されている様だ。今回は名門ニューヨークフィルしかも映画音楽作曲家デビット ニューマン指揮による世界初演であり、極めて興味深いイベントである。このイベントは映画音楽専門誌Film score monthly の今月11月号でも特集として、取り上げられており、スターウォーズファンのみならずサントラファンとしても注目度大の企画である。ジョン ウイリアムス作品としては、vol.12 で探訪した、シカゴ響による、ジョーズ全曲シネコンサートに続き今年3回目の探訪である。好みの映画音楽作曲家の作品群が生演奏でしかも、名門オーケストラで鑑賞出来るとは、時代は変わったと感じる。 1977Star Wars公開され、ロンドン響演奏によるLPのサントラが発売された当時から、この曲は、オーケストラによるコンサートを意識していると見ていたが、サントラを名門ロンドン交響楽団に録音させたのは、当時のサントラ音質の悪さに辟易していた自分にとっても、驚きと共に、大きな喜びでもあり、映画音楽(ウイリアムズの作品が)が、クラシック音楽作品と比べても、引けを取らないと確信させた事を覚えている。思い出せば、当時サントラの新録企画は黎明期で、チャールズ ゲルハルト指揮ナショナルフィルが一連のハリウッド作曲群の新録をリリースし、ようやく映画音楽の純音楽としての価値見直しが始まった時期で、スターウォーズの音楽は、この流れを大きく後押ししたと考えている。当時、この作品をコンサートホールで鑑賞したいと願っていたが、実際、鑑賞出来るとは、想像すらできなかった。何故なら、オーケストラのコンサートといえば定番のクラシックレパートリーで、映画音楽はあり得ず、あったとしても、軽音楽のポップスコンサートとして、主題曲の寄せ集め程度、全曲はあり得ない事であった。そして今、シネコンサートと定義される、新しい音楽芸術の流れの中で、実現した事になる。誠に感慨深い。さて、5日木曜のReturn of the Jediである。当日の会場は、スターウォーズフリークによるコスプレ連が多いかと想像したが、全く見られなかった。開催日が平日である事も関係していると思うが、客層的には年齢は高くおそらく、Return of the Jediを見て育った年代層だろう。特別イベント故か、会場は超満員。グッズ販売、ダースベイダー、R2D2との記念写真他イベントを盛り上げていたが、オーケストラコンサートとしての品位は保たれていた。今回探訪の目玉の一つは、フォックスの音楽部長かつ映画音楽作曲家で、ハリウッドの黄金期を支えたアルフレッド ニューマンの息子、デビット ニューマンの指揮を自分の目で確認できることである。自身も映画音楽を手掛けており、指揮の腕に関心がある。冒頭、父親が作曲した20世紀フォックス ファンファーレの指揮で演奏が開始されると、会場から大きな喝采が起きた。サントラや、新録にもこのファンファーレは追加されており、極めて象徴的な音楽である。お馴染みのメインテーマが始まると、さらに大きな喝采となった。この点は、いかにもアメリカ的である。前半はジャバザハット討伐に関する展開で、一部オーケストラ以外の部分、特にバーでの音楽が録音であるが、それ以外はオーケストラ演奏。イヲーク族との遭遇のところで、休憩が入る。後半から、物語の構成から戦闘シーンが多くなり、音楽も大きく盛り上がる。ほぼ切れ目なく、音楽が演奏され、かなり聴きごたえがある。想像していたが、リンカーンセンターDavid Geffenホールは音響効果が良く、ウイリアムスの戦闘シーン音楽は、まさに鳥肌が立つほど壮烈で、ニューマン、ニューヨークフィルによる渾身の演奏会を堪能できた。通常サントラは、小間切れ録音で、演奏者の負担は軽減されるが、今回の様なコンサートで、2時間に及ぶ全曲を演奏するのは、オーケストラ、指揮共に、相当な緊張、負担があると思われる。実際、ニューマンは指揮終了後汗まみれで、それを実感した。後半では、イヲーク族による戦闘音楽が更に特徴的でBoobamtを代表とする特殊打楽器群とオーケストラのコラボも素晴らしかった。イヲークラッパとニューヨークフィルの管楽のタイミングがドンピシャで、生でやりこなすのは相当難しいのではないかと想像する。そして最後のエンドクレジットでの音楽は、本編内容をまとめた、構成で、1篇の組曲として、本来の音楽のみのコンサートを鑑賞した感覚であった。ニューヨークフィルの演奏を存分に楽しめる素晴らしい締めくくりになった。最後にジョンウイリアムスのクレジットが表示された時、改めて大きな喝采があり、ウイリアムスの偉業にしばし思いを馳せた。終了後のスタンディングオベーションも大きく盛り上がり、素晴らしいコンサートであった。

次に第二日目金曜日の公演The Force Awakensである。第一日目探訪のReturn of the Jediは正確に述べると、世界初演から2日目であったが、本作は、文字同りの世界初演日になる。前日同様満員で、人気の高さを伺わせる。

第一日目は、スクリーン全体を見渡せる位置であったが、今回は最前列に陣取った。The Force Awakensのサントラ盤は、それ以前のスターウォーズサントラに比べ音質は格段によくなっているが、残念ながら、全曲を網羅しておらず、今回は生で全曲を聴きこむ絶好のチャンスである。Return of the Jediの演奏も同様であったが、音響効果抜群のコンサートホールで、ほぼ切れ目なくウイリアムスの楽曲の演奏がニューヨークフィルによって2時間近く、自分の目前で演奏される、夢の様である。やはり目玉はReturn of the Jedi同様戦闘シーンの音楽で、今回のニューヨークフィルの演奏はかなり熱が入っており、打楽器と管楽器群の疾風怒濤の演奏がすさまじい迫力で驚嘆した。とにかく、繰り返し、弾丸のごとく腹に振動が伝わって来るのである。特に、後半ハンソロと息子の対決、悲劇の結末を劇的に表現する弦楽表現から基地コア破壊に至る戦闘音楽、静動の起伏が印象的で、しばしスクリーンから、目を離し、音楽およびオーケストラに意識集中すると、改めて、音楽単独でも充分楽しめる可能性があると感じた。当たり前であるが、CD鑑賞とは全く異なる体験で、ここにシネコンサートの凄味がある。これだけ長い全曲演奏は過酷であったと思うが、ミスのない演奏であった。さすがである。前日同様、エンドクレジットでの演奏も秀逸で、ブラボーコールによる喝采で盛り上がり終演した。

 

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会場入り口にて                            会場内記念撮影用アトラクション

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R2D2も参加                             フォースの覚醒公演日では、ベンも参加

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 1日目会場の雰囲気 スクリーン全体を見渡す

 

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二日目 ステージ前方、世界初演、出来立てほやほやのスコアが見える。

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 会場のGEFFENホールは音響効果抜群      演奏会記念プログラム

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                

VOL.18;2017年9月23日探訪 ヤナーチェク編 Opera: Cunning Little Vixen

Opera: Cunning Little Vixen with the projection of original digital animation

The Cleveland Orchestra       Franz Welser-Möst, conductor

Cleveland Orchestra Chamber Chorus Cleveland Orchestra Children's Chorus

Martina Janková, soprano (Vixen)

others

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今回の探訪はヤナーチェクによるオペラ作品である。当方が興味を抱く作品は、主に1900年以後生まれの作曲家群によるものであるが故、1800年台生誕の当該作曲家には、これまで、さほど興味を抱いてはいなかった。今回探訪のきっかけになったのは、当該オペラを、なんと3面スクリーンによる、アニメ映像に合わせて演奏する極めて興味深い試みであったからである。これまで、映画音楽、現代音楽コンサートを中心に探訪してきたが、本来オペラとして意図された作品が、映像+管弦楽作として、どのように変貌したのか、興味を抱いた。演奏はクリーブランド響で、アニメーションはオリジナルで作成した様である。調べてみるとアニメ版に関しては、すでにケントナガノ指揮によるdvdがリリースされている様であるが、今回は別物の独自作と思われる。実は今回の公演は同響による2014年度公演の再演となっている。さてその内容であるが、従来のオペラ形式は被り物を被ったソロイストたちが、舞台で歌唱するわけであるが、本作の様な、ファンタジー的要素を含んだ内容では、被り物と舞台装置だけでは表現に限界がある。そこで、表現を広げるために映像アニメーションを導入しても、いわゆるサントラ劇音楽ならば、そのままで、うまくいくが、オペラとなると歌唱しているソロイストたちの表現力即ち、生身の体から出る表現を鑑賞できなくなる(なぜなら、アニメ映像のみなので、ソロイストの姿が見えない)。このジレンマを解消させるために、アニメ映像とソロイストの登場する舞台を融合させた所に、今回の独自性がある。実際は、人間としての登場人物は基本的に舞台に現れ、その他、狐等の動物に関しては、基本映像で表現されるが、歌唱の場面に合わせて、スクリーン上にある、穴からソロイストたちの顔が現れ歌唱するものである。奇妙な光景であるが、画像とソロイストたちの顔の位置がうまくシンクロされており、不自然感はあまり感じられず、映像によるファンタジー表現と舞台による歌劇表現が見事に融合していた。映像と音楽の融合に注目すると、特に出色していたのは、オーケストラによる間奏曲が印象深い。アニメによる自然描写とヤナーチェクの音楽が見事に合致しており、クリーブランド響による演奏は幻想的かつ眩い世界を上手く表現していた。以前、訪れた、早坂文雄の交響的童話「ムクの木の話し」のシネコンサートも、アニメと音楽でも、自然描写が巧みに表現されていた記憶がある。映像と音楽の融合が生み出す効果としては、共通する何かを感じた。今回の公演は、従来のシネコンサートでもない、また単なるオペラでもないユニークな芸術表現の可能性を実感した。

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会場の雰囲気  3面スクリーンがユニーク    

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      女狐のデコレーション

 

VOL.17;2017年9月16日探訪 バーナード ハーマン編その2 Vertigo 全曲  

 

Alfred Hitchcock’s Vertigo  

Live with the Bard College Conservatory Orchestra

Conducted by James Bagwell

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vol.9   で報告した、サイコ全曲に続き、今年2回目のハーマン作品、それも長年、探訪の機会を逃がしてきた、Vertigo全曲のシネコンサートである。個人的にVertigoは、その緊迫感あるストーリー展開と対立する抒情性をハーマンの音楽が見事に支えた傑作で、ハーマン作品でも、特に注目してきた作品である。演奏会の場所は、ニューヨーク市から北へ、車で2時間程度にあるAnnandale-on-Hudson(ハドソン川に面した、風光明媚なロケーションであるが、かなり田舎)在のBard大学オケによる演奏である、当該曲はすでに、Jhon Goberman プロデュースによるシネコンが、全米の主要オーケストラにて、一巡終了しており、近々のシネコン予定は英国のため、探訪を諦めていたが、突然、情報が飛び込み、急遽探訪を試みた、偶然にもvol.9 で言及した、ハーマンのレアー曲演奏会(2008年)は、ここAnnandale-on-Hudsonよりやや、北に位置する町 Albany にある、Albany Symphony Orchestraにより演奏されており、その演奏会の事を思い出した(詳細はvol.9参照)。ところで、今年11月にはNew York でハーマンの交響曲1番(CBS 、New York Phil 委託作品)の演奏が予定されており、New York 近辺で彼の作品が比較的多く演奏される傾向が有ると感じる。かつてハーマンが活動していた地、New York との縁が残っているのだろうか?さて、今回の演奏である。学生オーケストラであるが、ハーマン作品を全曲生演奏で聴ける数少ない機会で贅沢をいえない。オーケストラの生演奏で、どのような音が出てくるか、演奏者がどう演奏するのか、映像との関係はどうなのか、最前列に陣取って、観察を決め込んだ。冒頭導入シーン、屋上での追跡および落下までの、一気呵成の演奏はかなりの迫力を感じ取れた。所々、管楽器でのミスが見られたが、スコティ―の尾行、マデリンとの感情表現で聞かれる弦楽は素晴らしく、Scene D'AmourにおいてはCDでは、聞き取りにくかった詳細を観察できた。やはり、弦楽による心理描写の効果が素晴らしい。画像から目を外し、コンサートホールに響く演奏に集中すると、まるで、独立した管弦楽のコンサートピースとして演奏されている様な印象だ。CDではやや、単調に聞こえてしまうが、生演奏では奏者の緊迫感が、直接伝わってきた。悲劇の終末を締めくくる全奏は力がこもった力演で、ハーマンが意図したであろう音楽芸術作品としての締めを、存分に感じ取れた。それは、CDとは異なり、生オーケストラであるが故の感動である。野心的なプログラムを企画推進した大学に敬意を表したいが、満員であった当日の観客たちを見るに、それを支えた、米人たちの芸術に対する懐の深さを痛感した。

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演奏大学はハドソン川対面に位置    森の中に忽然と有るコンサートホール

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 入口にて                                       会場の雰囲気 

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 会場には、Mathieson指揮のサントラ盤を思い起こさせる掲示があった。

 

 

VOL.16;2017年8月19日探訪 ハワード ショアー編  The Lord of the Rings:The Two Towers 全曲

 

The Lord of the Rings: The Two Towers

Complete score performed live by Chicago Symphony Orchestra

conducted by Ludwing Wicki  

Chicago Chorale The Lakeside Singers Kaitlyn Lusk, Soprano

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今回の探訪は、当方、今シーズン最後の野外コンサートRavinia 音楽祭での、ハワード ショアーThe lord of the rings: The two towersである。ショアーは、大化けした作曲家の1人であり現在は超有名であるが、当方の関心としては、低い部類の作曲家であった。80年代からの印象は、クローネンバーグホラー専属作曲家の概念が強かったせいか、曲調が暗く、今一つ魅力に欠ける印象があり、それほど注目していなかった。The lord of the ringsに関しても、70年代にリリースされた、ローゼンマンによるアニメ版指輪物語のスコア(個人的には当該スコアー全曲新録を切望しているのだが、、、)に傾倒していた事、一部の曲調がスターウォーズに使用された旋律に類似しており、2番煎じ音楽の感があったために、着目していなかった。ところが、この彼に対する固定概念を、崩したのがThe Flyのオペラ化で、これには、度肝を抜かされた。映画音楽をベースにオペラ化した見事なスコアを提供しており、彼の音楽が持つ芸術的潜在能力を、遅ればせながら、認識した次第である。The lord of the ringsに関しても、3部作から、主要部を抽出したThe lord of rings symphony が、北米各地でも頻繁に演奏会で取り上げられる様になり、探訪を検討していた。そこで、今回のシネコンサートである。今回の演奏会は、ラビニア音楽祭の企画で3部作を3日間連続で、しかも全曲のシネコンサートを野外で演奏するユニークな演奏会(実際、以前同音楽祭で、かつシカゴ響で演奏された様である)になっており、当方参上したのは、第二作目The Two Towersである。アカデミー賞を逃しているものの、全曲鑑賞できるので、彼の作品をある程度鳥瞰できると考えた。やはり、圧巻は大規模な合唱が、圧倒的迫力を有し、野外にもかかわらず、音響効果を楽しめた。映画音楽の枠を超え、オラトリオ作品ととらえる事もできるだろう。

印象に残ったのは、Kaitlyn Luskによるソプラノ独唱部分である。The two towersは他の2作品と比べて独唱部分が多いと思われる、特にアラゴルンのモチーフや決戦で没した兵士のエレジー等々、現実にオーケストラと共に一体になって演ずる様は、スクリーンに映る映像と対比して特別な感動を覚えた。この感覚は、プロコフィエフのアレクサンダーネフスキーのシネコンサートでやはり、メゾソプラノが、独唱した時と類似した感動である(当方探訪記vol.3参照方 )、ショア―がプロコフィエフを意識してこの作品を作曲したことは、明らかで、双方のシネコンサートを経験して得られた貴重な収穫である。

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RAVINIA 野外講演会場入り口   野外会場スクリーン

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オーケストラステージを望む    演奏準備完了。大合唱団は圧巻

 

VOL.15;2008年8月9日探訪 ロン ジョーンズ編 その2 STAR TREK :THE NEXT GENERATION SUITE

 

1.THE ASCENT :WORLD PREMIER OF A NEW ORCHESTRAL WORK DEDICATED TO THE LIFE AND CREATIVE WORK OF GENE RODDEN BERRY

2.STAR TREK :THE NEXT GENERATION SUITE

LAS VEGAS PHILHARMONIC  CONDUCTED BY RON JONES

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 前回のVOL.14で言及した様に、今回もロン ジョーンズに関する、演奏会であるが、過去(2008年)のコンサートについて記録する。前回紹介同様、このコンサートも、スタートレック、2008年度コンベンション中、目玉企画の一つであったと記憶する。コンベンション会場であるヒルトンホテル内の演奏会場にラスベガス響を配し、associate conductorである Richard McGee が ゴールドスミス、ホーナー、ローゼンマン 、マッカーシー、クーリッジ 作曲のテーマ曲のみ演奏し、特別企画として、ジョーンズが表題の2曲を指揮した演奏会である。やはり目玉はジョーンズの指揮、楽曲で1曲は世界初演になる、ジーン ロッデンベリーの功績を讃えた小品とThe next generation組曲であろう。小生もそのために参上したのである。2008年当時は、FILM SCORE MONTHLY より、後にリリースされた、 THE RON JONES  PROJECT ー彼が作曲したTHE NEXT GENARATION 向けのサントラ全曲集ーが発売される前で、スタトレ関係で彼の楽曲が、唯一鑑賞できるCDは、CRESCEND から発売されていたTHE BEST OF BOTH WAORLDS および、INTER PLAYから、ゲームと同時発売された、ゲーム音楽STAR FLEET ACADEMY のみで、彼の作品を生で鑑賞出来る、このコンサートは超期待大であった。当日のサイン会で、彼に直接会える機会があり、持参した前述の2枚の愛聴CDにサインを頂き、よい記念となった。この時、彼との歓談で、彼が作曲した秀逸なサントラ、特にNEXT GENARATION シリーズがリリースされないのは、極めて残念だと彼に吐露したのであるが、当然、彼からは、前述の全集リリース予定の話は全く無く、CDが出ればいいのにね、、、とお茶を濁した回答を受けたのを記憶している。今から考えると、おそらく、その時点で全集の話は決まっていたのでは?と推定する。さて、当日演奏された15分程度の組曲は、2部構成で、第一組曲はエピソード11001001及び、where no one has gone before から抽出 、第二組曲はエピソードskin of evil からターシャのエレジー(原曲はtashas goodbye)から抽出された組曲に構成され演奏されたと記憶する。いずれも、彼が提供した音楽の肝を抑えた内容になっており、たいへん満足できる内容であった。次にThe Ascent であるが、これは、ロッデンベリーの功績を讃える為に、この時のコンベンションのために、ジョーンズが特別に書き下ろした小品で6分程度の演奏で、同時にスライドでロッデンベリーの功績を記したスナップがデモされながら、演奏されたもので、弦楽を主体にした導入から、次第にフルオーケストラによる全奏で盛り上げた、構成はよくできておりスライドの内容とよく合った印象的な音楽であった。ベガス響の演奏が今一つであったので、ぜひ再演奏の機会があれば、と思う。

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演奏会場(ラスベガス ヒルトンホテル)の雰囲気