米国オーケストラによる 映画音楽 近現代曲 コンサート探訪記

サントラファンが書く、米国オーケストラによる、映画音楽、近現代音楽演奏会探訪記録および所感。

VOL.40 ;2019年2月9日 探訪 バーナード ハーマン 編その4 : モビーディック(短縮版) MOBY DICK (abridged) 演奏 Akron Symphony

Barber :Adagio for Strings

Herrmann Moby-Dick (abridged)

Others

Akron Symphony conducted by Christopher Wilkins
Timothy Culver, tenor
Brian Keith Johnson, baritone

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今回の探訪は,Akron Symphonyによる、ハーマンの声楽曲 モビーディックになる。演奏会は ”THE SOUND OF THE SEA”と海をテーマにしたコンサートで、定番であるドビュッシー”海”をプログラムの最後に配置し海洋に関する作品を、4曲取り上げて演奏する形式になっている。したがって、当該曲も、その範疇の1つとして、取り上げられたと考えるが、ハーマンの純音楽、しかも声楽作品が演奏される機会は少なく極めて貴重な演奏会であり、探訪の価値は十分あると判断した。ハーマンは声楽曲をいくつか残しているが、本曲はオペラ”嵐が丘”に並ぶ傑作で、自身指揮によるユニーコーン盤がリリースされた折には、早速入手、その劇的音楽に感動した記憶がある。これまでに幾度か演奏会が企画されていたが、いずれも、鑑賞の機会を逃しており、今回は何とか探訪し、ハーマンの迫力ある声楽をホールで鑑賞したいと考えていた。演奏会第1曲目は、ハーマンと同様、好みの作曲家、バーバーのアダージョが配されていた。当該曲と海洋の関係は直接ないが、オーケストラ背後のスクリーンには痛ましい海洋環境破壊の問題を定義するフォトエッセイが映し出されており、当該曲の有する悲壮感を共通項として表現したかったのであろう。悲壮感といえば、ハーマンのFor the fallenを思い起こす。曲想は第2次大戦戦没者を悼むものであるが、バーバーのアダージョに劣らない表現力を有する傑作だと思う。アダージョは戦争映画プラトーンのサントラにも引用され、さらに知名度が上がった名曲であるが、聴きくらべてみると理解できるが、両作曲家の特徴を良く反映している一方、ますます両曲の共通性を感じざるを得ない。ユニーコーン盤CDモビーデックのカップリング曲にはFor the fallenが収録されており、偶然の一致ではあるが、今回改めてハーマンの隠れた名曲に思いを巡らせる良い機会になった。第2曲目は、いよいよ、モビーディックである。カンタータであるが、予告にはカンタータの記載が一切なかったので、不思議に感じていたが、その理由が理解できた。実際は男性合唱を割愛し(テノール、バリトンの独唱のみ)、全体30分弱を切れ目なく連続演奏できる様、巧妙に編曲されていた。演奏時間はコンサート全体の約半分を占めることになり、今回のコンサートのメイン曲と考えてもいいだろう。ハーマン自身は承服しないだろうが、自分的には、コーラスのない本バージョンに極めて新鮮な印象を受けた。なぜなら、声楽者2名の独唱に抑えた方がハーマンの管弦楽の響きをダイレクトに楽しめるからである。結果的にハーマンが最初に想定していたオペラに近い形態になったと感じる。実際鑑賞してみて、生演奏+コンサートホールでの響きの凄さを改めて認識した、1930年代の作曲でハーマンの初期作品ではあるが、後に生み出されれる映画音楽の傑作を予見させる表現の数々はコンサートホールでは格別で感動を覚えた。最前列位置したので、独唱者および弦楽の響きの詳細を直前に感じ取ることができ、大変楽しめた。この短縮版は今後ますます演奏される可能性が高いと感じる。30分に渡り、ハーマン特有のダイナミズムとリリシズムを十分堪能し、ブラボーコールの連呼で前半の演奏会は終演した。今年2019年には、ハーマンの新録音企画として、黒衣の花嫁、CBSラジオの朗読用劇音楽(いわゆるメロドラム)がすでにリリース済みで、本演奏会を含め、ハーマンファンにとっては、幸運なイベントでの幕開けになっている。

 

 

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コンサートホールEJ Thomas hall

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   会場の雰囲気 オーケストラ後方にスクリーンが見える

Others

VOL.39 ;2019年1月27日 探訪 ショスタコ-ヴィチ 編その1: New Babylon (a silent film) Complete 新バビロン全曲  演奏 Westerville Symphony

   Dmitri Shostakovich-New Babylon  complete film concert

 Westerville Symphony 、Peter Stafford Wilson, Conductor

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本年最初の探訪はショスタコ-ヴィチ の映画音楽シネコンサートになる。ショスタコ-ヴィチは、当方好みの作曲家の1人である。いや、好み以上の存在かもしれない、特に、彼の交響曲の数々は、繰り返し、繰り返し聴いても、新たな感動がこみ上げる、底知れない魅力に満ち溢れた音楽である事は確かである。苦難に満ちた人生経験から得られた、繊細、深遠かつ燻し銀の様な芸術は一見は暗く、難解で理解され難いが、多くの人々を魅了してきた事は事実であり、イデオロギーの垣根を超えて、米国、全世界で受け入れられ、現在も多くの演奏会で取り上げられ続ける事を考えると、その影響力と魅力は底知れない。この様に、当方の興味は交響曲から入ったのであるが、ショスタコ-ヴィチが数多くの映画音楽を残している事を知ってからは、彼の映画音楽を追い求めて来た次第である。思い起こせば、はじめて彼の映画音楽を知ったのは、ロジェストヴェンスキー、モスクワ・フィルによる70年代のLP盤による新バビロン組曲であったと記憶する。現在こそ彼の映画音楽の大半が新録音され全貌が判明してきたが、当時はほぼ皆無であり、すぐに飛びついた記憶がある。しかしながら、自分的には重厚な音楽を期待していたので、鑑賞して拍子抜けした記憶がある。新バビロンは彼の映画音楽第一作、しかも 弱冠23歳で手がけた作品で、前衛に傾倒していた時期の作品故、晩年期の多くの交響曲に見られる、重厚な響きは見出せるはずがない。もっともストーリー上、ニューバビロンで繰り広げられる、狂乱じみた販売を揶揄する音楽が冒頭から導入されているわけだから、当然の話でもある。ただし、最後期の映画音楽、ハムレット、リア王からは、重厚な響きを存分に楽しむことができ、特にハムレットの音楽は出色しており、米国映画音楽作曲家バーナードハーマンも生前、自身の新録音に含めているほどである。ただし、新バビロンが作曲された1929年には傑作交響曲3番(自分的には、晩年期の作品にはない魅力を感じる)も作曲されており、一概に敬遠する必要もないと、感じている。その後、2006年 STRONBELI指揮による新バビロン全曲盤がリリースされ、当該曲に関する、見方が変わった。先のロジェストヴェンスキー盤には含まれていなかった、数々の劇音楽による描写から、その後の交響曲、映画音楽に見られる響きの一片を感じ取ったからである。本演奏会のプログラムによると70年代、ショスタコ-ヴィチに新バビロンのスコア復元、演奏の打診があったが、彼は、当該曲の作曲が未熟故、頑なに拒否したと記録されている。また、別の話として、彼の初期の交響曲は無視してほしいと、周囲に吐露したとの逸話も聞いたことがある。自己の信念を貫く作曲家として、自身の初期作品にさえも妥協を許せなかったのであろうが、皮肉にも、彼の死後、初期作品の新録音もいくつかリリースされている。本人が生きておれば、承服していないであろうが、1作でも多く、彼の作品を鑑賞したいファンとしては、まことに有難いことである。さて演奏である。オーケストラ編成は29年当時と同じ小編成で、それに合わせ、コンサートホールは、小ホールであった。本来はオーケストラピットにすべて収まって演奏されると想定されるが、今回はステージ上スクリーンの前に配置されていおり、音響効果的には良いと感じた。今回の企画は英国のREALITY なるプロダクションが、フィルム復元を含めたシネコンサートのイベントを手がけている。新バビロン全曲のシネコンサートは極めて珍しく、今回の探訪を決断した背景でもある。STRONBELI指揮盤の収録と同様に全8幕の構成で画像が映し出されている間は、ほぼすべて音楽が付けられていた。やはり、はじめての映画音楽作曲故か、映像と音楽のバランスが不自然な部分も見受けられたが、フランス政府軍とコミューンの戦闘シーンや、ジャンの苦悩を描写する劇音楽は秀逸で画像とうまくマッチしていた。ショスタコ-ヴィチが得意とする既存曲の運用も効果的で、コンサートホールでは、その点が際立った。ラマルセイユの引用に関しては、マックス スタイナーがカサブランカで効果的に使用していたが、ショスタコ-ヴィチは、すでに、映画黎明期に、使っていた事になり、改めて、その手腕に感動させられた。古い映像ではあるが、1929年当時の映画館でショスタコ-ヴィチ の音楽がどのように響いたのか、(音質は当然、格段優れているはずであるが、、)追体験できる貴重な経験になった。

 

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コンサートホール Reily Auditrium 入り口にて

 

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 会場の雰囲気              演奏会のチラシ

 

VOL.38 ;2018年11月24日探訪 ジョン ウイリアムズ編その8 Episode 5 : Empire Strikes Back スター ウオーズ 帝国の逆襲 演奏 Chicago symphony orchestra シカゴ交響楽団

Star Wars: The Empire Strikes Back

(Score performed live to complete film)

Chicago symphony orchestra conducted by Richard Kaufman

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今回の探訪はvol.19,vol.35 でも取り上げた、シカゴ響によるスターウォーズ、シネコンサートシリーズになる。ニュヨークフィルによるReturn of the Jedi, Force awakens の世界初演及びシカゴ響によるA new hope のコンサート探訪後、残り未探訪であったThe Empire Strikes Back in Concertを今回の探訪することができた。これで、現在企画されているスターウォーズ、シネコンサートシリーズを,いずれも米国名門オーケストラで鑑賞することができ,サントラファン、ウイリアムズファンとして貴重な経験になった。思い起こせば、70年、80年代サントラ盤が発売された当初、繰り返し鑑賞しては、コンサートホールでは、どのように響くのだろうかと考えていた、特にThe Empire Strikes Backに関しては、ストーリー順と無関係な一部抜粋曲のサントラLP発売からほどなく、70年代に映画音楽新録シリーズ(自分的には映画音楽界における偉業と捉えている)の火付け役になったCharles Gerhard 、National Phil による、当該曲の新録の組曲集がリリースされ、即購入、鑑賞した記憶がある。音質の良い新録音及び熱のこもった演奏に驚嘆するとともに、当時のサントラ未収録曲群に、すばらしい曲が存在していることを認識した記憶が今でも強烈に残っている。その後、全曲サントラがリリースされ、音楽的にも前作A new hopeよりも変化に富んだ、素晴らしい楽曲群の全貌がわかり、ますます、コンサートホールでの全曲鑑賞を待ち望むことになった次第である。探訪順では最後になったが、コンサートホールでの響きを一番確認したかった作品になる。今新たに聞き直しても、いずれの楽曲も興味深いオーケストレーションによる斬新な響きを有し、1作目を凌駕しようとする,作曲家ウイリアムズの意気込みが感じられる。さて、当日は、通常のコンサートと変わらぬ8時前後の演奏開始で、若年層も見られるが、大半の客層は、おそらくこの映画を見て育った年齢層であろうか、落ち着いた感じを受ける。特別興行目当ての、一見さん達だけではなく、地域オーケストラを支える、近隣住民が大半と思われ、コンサートホールは満席状態であった。前回作A new hopeにおいては後方席に位置し、金管、打楽器のホールの反響効果を十分堪能したが、本作The Empire Strikes Back では後述の様に、弦楽の巧妙さを楽しめる、好みの楽曲が多いゆえ、弦楽群の観察目的で、ステージ近く前方席に陣取った。おなじみフォックスファンファーレからオープニング開始で、前回同様、観客から歓声による盛り上がりでスタート(これがアメリカのスタイル?の様だ)。惑星ホスの描写音楽に突入し、レイア姫のテーマを絡めながらも、今後の展開を予想させる緊張感を高める劇音はホールの響きでいっそう効果的に感じた。前半で注目していたポイントは、雪上での戦いでの音楽で、サントラでは、ピアノによるAT-AT歩行描写が、巧妙かつ効果的であったが、今回のコンサートでは、効果音の大音量の為か、うまく聞き取れなかった(割愛されていた可能性も有)。シネコンサートにおいては、何を主体にすべきなのか、効果音か?オーケストラか?どのようにバランスをとるのか、難しい選択になるだろう。(極論になるが、自分的には、映像なしで、音楽のみで全曲演奏を希望するし、それでも十分鑑賞価値は有ると信じる。)その後は、ヨーダを絡めた音楽が面白いが、弦楽演奏も、サントラより短く、残念ではあったが、ジェダイのフォーストレーニングにおける、静動のバランスを表現する管弦楽の絶妙なアンサンブルは十分楽しめた。サントラ全曲盤第1枚目cd終了と、ほぼ同様のタイミングで休憩が入り、 2枚目cdと同様にインペリアルマーチで後半が開始された、 後半最初の聴き所は、ソロが向かったクラウドシティー描写の音楽が印象的で好みの楽曲だ。サントラ盤では、地味ながら、すばらしい弦楽とマッチした女性コーラスが、さわやかな逸品で、当日の演奏では、どうなるか着目していたが、残念ながら、コーラスは割愛されていた。それでも、この部分のホールでの響きは格別であった。その後、後半の山場へと進む。ソロがカーボン冷凍されるシーンで、葬送曲風楽曲の中、演奏される打楽器連打のホール反響が格別。その後、当方一番の着目楽曲は、ベーダーの衝撃の告白後からルーク救出までに流れる劇音で、緊張をあおるような弦楽を、変調を繰り返しながら効果的に使用しており(ハーマンのサイコでの弦楽による効果と肩を並べても良いと個人的には考えている)極めてドラマテックかつ効果的な展開になっている、今回前方席に位置したのも、これら弦楽演奏を前方席からじっくり観察するためであり、その点は、十分堪能できた。最後に、定番曲エンドタイトルによる最大の盛り上がりと、ウイリアムズのクレジット表示時の更なる大喝采の中、終演した。

 追伸 ー演奏会とは無関係 であるが、 デトロイト美術館 スターウォーズコスチューム展(今年夏訪問)において展示あった、帝国の逆襲関係を一部、本記録に加えたい。

   

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入口にて                                  ホールにて (記念撮影用の背景)

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会場の雰囲気     前方席に位置した                     終演後

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デトロイト美術館 スターウォーズコスチューム展より


 

 

 

Vol.37 : 2018年11月3日探訪   バルトーク編 その1 木製の王子 全曲 演奏 Cleveland Orchestra クリーブランド管弦楽団

RACHMANINOFF - Piano Concerto No. 3

BARTÓK - The Wooden Prince (complete ballet music)

The Cleveland Orchestra

Matthias Pintscher, conductor

Kirill Gerstein, piano

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今回探訪の目的は、バルトークのバレー音楽、“木製の王子”全曲で、演奏はCleveland Orchestraである。前回はハーマンの“北北西に進路をとれ”全曲世界初演で探訪( VOL.22参照 )して以来約1年ぶりになる。バルトークの演奏会曲目の中で、“木製の王子”はなかなか演奏機会がない逸品である。当日のプログラムによるとCleveland Orchestraでの演奏は、これまでに2回だけの演奏で、前回演奏されたのは1996年と20年以上前になる。バルトークの舞台作品はダークな印象を受ける作品が多い中、題材及びストーリーがファンタジー的でありバレー音楽でありながら、想像力で映像を描きやすく、かつ劇音楽的要素が強い故、映画音楽との類似性を感じており、長年の愛聴曲になっている。全曲を通して、幻想的な雰囲気を醸し出したオーケストレーションで、聞き込むごとに、その独自な世界に引き込まれてゆく。全曲50分近くになる音楽構成は静寂から開始し静寂に帰結し、あたかも一大幻想音楽絵巻を見るようである。特にこの曲は視覚的故に音響効果が重要であり、Cleveland Orchestraによる、ここSEVERANCE HALL での響きは秀逸。大いに癒される演奏会になった。

 

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紅葉の背景にSEVERANCE HALL を表紙に配した当日のプログラム

Vol.36 : 2018年10月6日探訪  サミュエル バーバー編 その1  : Essay No. 1 演奏 Cincinnati symphony orchestra シンシナティー交響楽団

ADAMS: The Chairman Dances

COPLAND: Suite from the Ballet Billy the Kid

BARBER: Essay No. 1

ADAMS: The Dharma at Big Sur

Cincinnati symphony conducted by Christopher Rountree

Electric violin by Tracy Silverman

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今回の探訪はシンシナティ響によるプログラムである。演奏曲は全曲すべて米国作曲家による、近現代音楽が取り上げられ、しかも、コープランド、バーバー、アダムスと、いずれも当方好みの作曲家群および選曲となっているため、探訪を挙行した。シンシナティ響といえば、エリックカンゼルが活躍していたころは、映画音楽の選曲が多かったせいか、シンシナティーポップスのコンサートに、たびたび参上していたが、今回、久々の探訪となった。今回vol.36 の表題はバーバーとして銘打っているが、コープランド、アダムスの楽曲群も、当方好みで大変興味深い選曲になっている。おそらく、コンサートとしての目玉は、第1曲及び締めの第四曲に配した、アダムス作品の2曲になるだろう。さて、BARBER: Essay No. 1である。バーバーはエッセイを、全3曲残しているが、いずれも魅力のある樂曲であり当方好みの曲であるが、比較的演奏機会が少なく自分的には、今回のシンシナティ響で、初めてのコンサート体験になる。今回演奏される1番は一番地味で、盛り上がりも少ない感じがするが、バーバー特有の旋律をコンサートホールで十分堪能できた。バーバーに関しては交響曲、バレー、オペラいずれも興味深い作品を残しており、いずれも米国外では演奏機会が少ないので、今後も探訪のターゲットとしたい。次に、コープランドのSuite from the Ballet Billy the Kidである。ストーリー展開含め、極めて映画的要素を有する本曲はダイナミックなオーケストレーションとコープランドのリリシズムが融合されており、彼のバレー曲のなかでも、特に好みの楽曲である。コンサートホールでのコープランド特有の響きを楽しめた。当日プログラムによると、コープランド自身シンシナティ響で当該曲を指揮した記録があり、それがシンシナティ初演の様だ、彼自身このコンサートホールで同曲を指揮したとは感慨深い。最後はアダムスの楽曲になる。アダムスといえば、NIXSON IN CHINA のオペラが当方の脳裏に鮮烈に記憶されている。オペラ題材に政治イベント引用する大胆さに唖然とした記憶がある。既成概念にとらわれないオペラを手掛けるのは米国の懐の深さ言える。以前にも言及したが、ハワードショアー作曲、フライの映画音楽がオペラ化されたのも、このような自由な発想ができる土壌から生まれたのだと思う。(実際、彼はカナダ人の作曲家であるが、、、)さてThe Chairman Dancesである、アダムスの音楽はリズムの反復を多用する手法(いわゆるミニマルミュージック)を多用し、伊福部節に馴染んだ自分的には、好みの響きである。しかしながら、彼は、映画音楽的な分かりやすい表現も多用しており、映画音楽ファンにとっても、受け入れやすい音楽と思う。今回演奏されたThe Chairman Dancesからも、それが聴きとれる。ちなみに、興味深いことに、アダムスは レナード ローゼンマン(当方好みの作曲家)の映画音楽(エデンの東、理由なき反抗)を自身の指揮で、新録音CDをリリースしており、映画音楽に関しても理解が有ると推定され、好感が持てる作曲家である。最後にThe Dharma at Big Surである。The Chairman Dancesとは対照的に、より思索的抽象的な題材に楽想を求めており、東洋的な旋律を電子バイオリンで効果的に表現している、電子バイオリン独奏は本作の世界初演に演奏したTracy Silvermanによるもので本家の貫禄を感じ取れた。さらに今回オーケストラの背後にスクリーンが配置され、映像作家による、本作を題材にしたイメージビデオが演奏と同時に映し出されており、大変興味深く、新鮮な印象を受けた。心地よく、繰り返し波打ちながら終演を迎えた。

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コンサートホール入口にて

歴史を感じさせる立派なホール。 2017に内装一新した様だ。

 

VOL.35 ;2018年6月30日探訪 ジョン ウイリアムズ編その7 Episode 4 :A New Hope スター ウオーズ 新たなる希望 演奏 Chicago symphony orchestra シカゴ交響楽団

 Star Wars: A New hope in concert (Score performed live to complete film)

Chicago symphony orchestra conducted by Richard Kaufman

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今回の探訪は、vol.19でも取り上げた、ウイリアムズ作スターウオーズ、シネコンサートになる。vol.19では、ニューヨークフィルによるReturn of the Jedi , Force Awakensの世界初演の探訪について記載したが(詳細はvol.19参照)、今回の作品は、New hopeになる。演奏は、つい最近ウイリアムズ自身指揮のコンサート(vol.31  参照)および、同じくウイリアムズ作ジョーズのシネコンサート(vol. 12 参照)等を実施した、シカゴ響、指揮は長らくシカゴ響とのシネコンサートを手がけてきた人気のRichard Kaufman である。スターウオーズシリーズ第一作であり、音楽的にも、その後のシリーズの方向性を決定付ける重要な作品である。公開当時は、スペースオペラなる表現を用いる事で、映画そのものの表現のみならず、音楽にもオペラ的劇的な含みを持たせており、当時の映画音楽には珍しく、ロンドン響を駆使した録音に大いに驚いた記憶がある。公開当時に抜粋曲2枚組みLP、その後、全曲収録2枚組みCDがリリースされ、曲の全貌は把握できていたが、ぜひコンサートホールで鑑賞したいと切望していた。テーマ曲、インペリアルマーチ他の抜粋は無数のコンサートで取り上げられているが、全曲を通した演奏は皆無であった。前述のごとく、音楽には、オペラチックな劇性を求めて構成しており、オペラを鑑賞するように、コンサートホールで全曲をオープニングから最後のエンドクレジットまで聞き込む事が重要であると考えている。特にこの第一作にはその傾向が強いと思う。その記念的作品を名門シカゴ響で、しかも数々の名録音を生んできた、ここシカゴシンフォニーホールで鑑賞できた事は感慨深い。当方のスターウオーズ コンサートシリーズ探訪に関しては、映画の公開順とは、ほぼ逆順での鑑賞にはなるが、ウイリアムズの1大交響叙事詩とも言える、スターウオーズシリーズ楽曲の全体を改めて、追体験する良い機会になった。ニューヨークフィルでの世界初演コンサートでは、ホールのエントランスで記念撮影、記念品販売他のイベントが目立ったが、今回は記念品販売はあるものの、目立ったイベントはなかった。コスプレ連は見られず、ロゴ入りのシャツを着た数人が散見される程度で、通常の演奏会と、さほど変わらない印象である。さて、演奏である。まず、フォックスファンファーレとオープニングでは、ニューヨークフィルでの初演と同様に観客から大歓声が上がった。特にフォックスファンファーレのホールでの響きは単に宣伝効果だけではなく、何か本編内容を期待させる儀式的効果があると思われる。イントロから畳み掛けるように、Imperial attack の劇伴が演奏されると、これまでコンサートホールで演奏されなかった部分に突入し感動を覚えた。70年代に初めて鑑賞した折感じたことではあるが、第一作はホルスト、ストラビンスキー等のクラシック作曲家の影響を顕著に感じていたが、特にThe dune sea 描写の音楽は,砂漠でのシーンではあるが、なぜか、春の祭典からの引用を連想させる。CDの鑑賞とホールでの鑑賞で大きく異なって聞こえるパートの1つはパーカッション群ではないだろうか、Sand people の攻撃では特に、ホールでの音響効果が抜群で、そのパワーに 圧倒される。当方好みの部分であるが、広大なMos eisley spaceport 景色を丘陵から望むシーンに流れる、ウイリアムズの初期作品特有の響きを有するフルオーケストラサウンドはコンサートホールで格別に感じ取れた。その後ファルコン号がデススターに牽引されるところで前半終了、休憩を挟み、ファルコン号の床底で難を逃れた一行が行動開始するところで、後半が開始される。これは以前から気になっていた事であるが、丁度この時使用される音楽が、バーナードハーマン作曲のサイコ、タクシードライバーのエンディングで使用されている、いわゆる恐怖のコーダーと、極めて類似した断片が聞き取れる。偶然の一致とは思われるが、同業の作曲家に敵が多いハーマンではあったが、ウイリアムズとの関係は良好であった様である、何か意図的なものを感じる。その後は、ダイナミックな音楽が主体になるが、劇音楽の効果として面白いのが、チューバッカと敵兵に紛れて姫の救出時の劇音楽wookie prisoner である。地味ながら緊張感を高める、ホールでのパーカッションの響きが印象に残る。次の山場で好みの曲は  Trash compactor である。四方から迫る壁の恐怖を描写する音楽は、ジョーズでの迫り来るサメの巧妙な恐怖描写に匹敵するほど、秀逸である。これも大画面で、しかもコンサートホールならではの効果を実感できる好例である。最後にThe battle of yavin でフルオーケストラによる怒迫力演奏後、おなじみのThrone room /end title と進んだ、何度も聞いている定番曲ではあるが、今回オープニングから全曲通してから最期に鑑賞する場合と、単独で、鑑賞する場合では、感動の度合いが全く違う。コンサートホールで観客オーケストラ一体となり、全曲のすべてを体験する事は、それを倍増させるのであろう。エンドクレジットでの演奏はvol.19でも言及したように一編の交響詩を聴く様で、シカゴ響の演奏も秀逸、ウイリアムズのクレジットが表示された時、新たな喝采が観客から上がり最大の盛り上がりで終演した。ニューヨークフィルでの初演およびシカゴ響による今回の演奏を探訪して感じたことであるが、シネコンサートとはいえ、演奏開始時間(夜8時ごろ)や演奏時間(2時間前後)は通常のクラシック音楽演奏会と同様に設定されている。(ホールの都合もあると考えられるが、、、)これは、このイベントを特別扱いし、お祭り騒ぎによる特別興行に終始するのでなく、シネコンサートを通常のオーケストラコンサートの’レパートリーとして、同様に扱うことで品位を持たせる事が、1芸術として末永く永続させる為には重要であると考えている。実際、全米の多くのオーケストラ(名門オーケストラ含む)では年間の演奏プログラムに複数のシネコンサートが、必ずと言っていいほど、組み込まれており、オーケストラの演奏プログラムとして市民権をすでに得ていると考えられる。ただし、人気作品に集中する傾向があるので、サントラファンとしては、売り上げに依存する人気作だけでなく、音楽的に秀逸な映画音楽(全曲演奏シネコンサートもしくは組曲)が少しでも多く演奏されることを切望する次第である。

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  入り口にて      小さいながらグッズの販売も有り。

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後方からの鑑賞であったが、音響効果は抜群のコンサートホール。

 

 

  

 

  

 

 

VOL.34 ;2018年6月23日探訪 ウォルター ピストン編 Symphony No. 6 演奏 Grant Park Orchestra  グラントパーク管弦楽団

グラントパークWalter Piston:   Symphony No. 6 

Other

Grant Park Orchestra conducted by Carlos Kalmar

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今回は、米国作曲家ウォルターピストンによる交響曲6番が主目的のコンサートの探訪になる。当方は、米国の近現代の作曲家作品群が好みで(ハリウッドの映画音楽作曲家群をそれに含めるのが当方持論である)、その存在を知る限り、作品の録音を探し回り、収集してきた。自分のスタンスは、映画音楽、純音楽の垣根を引くのでなく、オーケストラによる芸術として、理屈でなく感性に訴える音楽を、探し求めて来た次第である。ピストンに関しては、録音が多くの残されており、その作品を鑑賞できる機会は多い方であるかと思う。当方のピストン作品との、初めての出会いは、ルイビル響によるピストン作品集(First edition シリーズと銘打ち、Albany musicからLPがリリースされていた)である。個人的見解として、一般に良く言及される新古典主義的作風(ストラビンスキーがこの傾向に陥った後、斬新さを失ったため、自分的には、この作風は好まない)感じられなかった。また、 単に明るいだけな安直な曲調とは一線を画する、重厚かつ緻密な音楽構成は、一見、暗く、なじみ難い第一印象があるが(しかしながら絶妙のタイミングで軽快なリズムが織り込まれる、技巧がすばらしく感動を覚える)一度よく聞き込むと、ずるずる引き込まれる魅力を有しており、いつの間にか虜になっていた。この過程は自分の経験からは、ショスタコビッチの音楽に傾倒する過程に、類似している様である。ショスタコ同様に、入手できる作品を手当たり次第に収集するにいたっている。以後、米国の作曲家の中でも、好みの作曲家になっている。ところが残念なことに、演奏会で生演奏を経験できる機会は極めて少ない。演奏会で指揮者Carlos Kalmar自身がコメントで述べていた事であるが、ピストンの作品について、20年前は比較的頻繁に演奏されていたが、最近は少ないとの事である。したがって、米国の作曲家といえばバーンスタインかコープランドしか上がってこない米国外の演奏会では、ピストンの作品が、演奏される事は、ほぼゼロと考えられる。今回探訪のシカゴ、グラントパーク音楽祭では、そのピストンの交響曲6番を取り上げており、探訪の価値は十分あると判断した。演奏はGrant Park Orchestra、指揮はCarlos Kalmar になる。この組み合わせに関しては、 vol.20   でも言及した、米国の作曲家Robert Kurka のSymphony No. 2や American Works for Organ and OrchestraでBarberやPistonのオルガン付き管弦楽をCedille   からリリースしており(いずれの作品も愛聴盤となっている。)これらの事から、指揮者Carlos Kalmarは、かなり米国近現代作曲家に関心があると考えられる。彼は、これまでもグラントパーク音楽祭で、Chadwick、Harris、Piston、Diamond、Antheil等の米人現代音楽作品を取り上げており、当方好みの選曲が多く、ありがたい存在となっている。さて演奏である。グラントパーク音楽祭はラビニア音楽祭と並んでシカゴで注目の音楽祭で、ラビニア音楽祭会場は郊外に位置していることに対して、グラントパークはシカゴ響本拠地コンサートホールに近いダウンタウンの公園で実施され交通至便の上、環境は良い。野外コンサートで音響効果は期待できないが、好みのピストン交響曲が生演奏で楽しめる貴重な機会である故、リラックスして鑑賞を決込んだ。1940年代スタートアップされたGrant Park Orchestraの演奏レベルは高く、前述のごとく米国近現代作品が得意の様である。自分好みの作曲家作品しかも演奏機会の少ない、隠れた米国作曲家の逸品を米国のオーケストラで楽しめる、至福の時間となった。当日は好天に恵まれ、芝生の上でワイン片手に夕食を楽しみながら鑑賞している家族が目立った。このような、すばらしいコンサートが、なんと、無料開放(後方の一般席および芝生のみ)されているとは、本当にすばらしい。30分たらずの作品であるが、ピストン交響曲6番は著名な指揮者がこぞって録音しており、彼の代表作に祭り上げられている感がある。たしかにピストンの特徴を楽しめる作品ではあるが、自分的にはピューリッツァー賞に輝いた7番や8番の方が、より起伏に富んだ技巧を楽しめる為、より好みではある。今後の演奏会に期待したい。

 

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会場の雰囲気:Grant park 内に有るJay Pritzker Pavilionの様子