米国オーケストラによる 映画音楽 近現代曲 コンサート探訪記

サントラファンが書く、米国オーケストラによる、映画音楽、近現代音楽演奏会探訪記録および所感。

VOL.22 ;2017年11月19日探訪 バーナードハーマン編 その3 North by Northwest LIVE (Complete) 北北西に進路を取れ (全曲) 世界初演

North by Northwest LIVE

The Cleveland Orchestra
Richard Kaufman, conductor

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今回は、”北北西に進路を取れ” 全曲のシネコンサートである。Vol.9 で言及した様に、本来は今年5月にシカゴ響で世界初演の予定であったが、技術上の問題でサイコに代替え演奏された企画が、クリーブランド響で世界初演される事になった。シカゴ響で演奏されたのなら、本作ストーリ展開上、舞台として関係してくるシカゴとの関連があり、面白い機会と考えていたが、残念ながら実現しなかった。それでも、名門クリーブランド響による、今回の世界初演は、サントラファン、ハーマンファンにとって、貴重なイベントになる。北北西に進路を取れのサントラに関しては、70年代ハーマン自身による一部曲の新録が存在したが、長尺で鑑賞できるものは無く、80年代ローリージョンソンによる長尺の新録LPがリリースされ、ほぼ全体を鑑賞できた、特にマウントラッシュモアにおける追跡シーンに付けた音楽に驚嘆させられた記憶が今でも強烈に残っており、これが、ハーマンの音楽に傾倒してきた、大きな動機の一つになっている。その後、90年代ようやく、RHINO 盤による、ハーマン指揮のサントラがリリースされた事で、全曲が鑑賞可能になり、2000年代には、マクニーリーによる未使用楽曲含めた新録でさらに、より音質の良い状態で全曲鑑賞が可能になった。しかしながら、演奏会の機会は、ほぼ皆無で、当方探訪の経験範囲では、2007年にデトロイト響による組曲演奏が唯一になる、その音響効果に改めて感動して以来(vol.9参照)是非全曲をコンサートホールで体験したいと考え、待ちに待った今、世界初演である。さて、演奏である。ホテルシーン等で流れる背景音楽(バイオリン、ピアノによる演奏)で流れる、ラグタイムジャズ風背景音楽以外は、全て、ハーマン指揮のサントラと同様に、全て演奏されていた。OVERTURE 演奏から滑り出し、前半ロジャーが犯罪に巻き込まれていく楽曲CHEERS(以下ターナーのサントラ盤での使用曲名引用)あたりから、ハーマン特有の弦楽が単調ながらも、コンサートホールでは良く捉えることができ、緊張感、不安感を高めていた、その後、楽曲THE KNIFE あたりから、オーケストラ全奏による響きが加わり、劇的展開と、うまく調和している。後半から、イブとロジャーの抒情表現が多くなる。ホールで鑑賞するハーマンの抒情音楽は実に良い。大画面画像の下では、それがヒシヒシと伝わってくる。そして、有名なコーン畑でのシーンである。タンクローリーと飛行機の衝突までは、まったくの無音であるが、これがコンサートホールでは異様な雰囲気で、ヒッチコックはこれを期待したのかも知れない。自分的には、没になったハーマンの未使用曲の方が(マクニーリーの新録盤には楽曲THE HIGHWAY として収録あり)コンサートホールでは、良い効果があったと感じる。舞台をラピッドシティーに移し、ハーマン特有のダイナミックな楽曲THE SHOOTINGでの響きも良かった。その後弦楽主体のサスペンス描写に、しばし画面に集中後、当方好みの最終部分へと進む。楽曲THE GATESでテンポアップしたあたりから、熱のこもった演奏が楽しめる。そして、いよいよ、楽曲ON THE ROCKS から,最大の盛り上がり THE CLIFF ,FINALE と進む。VOL.6でも言及した様に、 ここSEVERANCE HALL の音響効果は抜群であり、この部分の演奏は期待大である。結果は予想どうり、”弩迫力!”の1言である。大画面に映し出される、マウントラッシュモアーの絶壁とともに、楽曲THE CLIFF で炸裂する打楽器、ハーマン特有の唸り節がコンサートホール中に響き渡った。特に長年ハーマンの音楽に魅了されてきた、ハーマンファンにとっては興奮の極みであり、コンサートホールで聞く、彼の音楽は効果抜群であると再認識した次第である。ハーマンは、”蛮地の太陽”や”十二哩の暗礁の下に”で通常とは異なる楽器や楽器編成を用いる事で、独特の響き追求してきており、この山場での響きには相当考慮したに違いない。だからこそ、このような感動を生み出す事ができるのだと思う。さらに、グランドフィナーレに進んで、感動の終演となった。今回で、主要なハーマンーヒッチコック3作品、サイコ、めまい、北北西に針路を取れ、シネコンサートを全て探訪することができた。ハーマン作品には、コンサートホールでの演奏してほしい作品群(例えば、ソプラノ独唱による、サランボーのアリア付き、市民ケーン全曲演奏等々)が、まだ多数残っており、今後のシネコンサートでの演奏を、大いに期待したい。

 

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