映画音楽 近現代曲 コンサート探訪記

サントラファンが書く、米国オーケストラによる、映画音楽、近現代音楽演奏会探訪記録および所感。

ショスタコ-ヴィチ 編その1:新バビロン (全曲) New Babylon (a silent film) Complete 演奏 Westerville Symphony (VOL.39 ;2019年1月27日 探訪)

    コンサート曲目

 Dmitri Shostakovich-New Babylon  complete film concert

 Westerville Symphony 、Peter Stafford Wilson, Conductor

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

本年最初の探訪はショスタコ-ヴィチ の映画音楽シネコンサートになる。ショスタコ-ヴィチは、当方好みの作曲家の1人である。いや、好み以上の存在かもしれない、特に、彼の交響曲の数々は、繰り返し、繰り返し聴いても、新たな感動がこみ上げる、底知れない魅力に満ち溢れた音楽である事は確かである。苦難に満ちた人生経験から得られた、繊細、深遠かつ燻し銀の様な芸術は一見は暗く、難解で理解され難いが、多くの人々を魅了してきた事は事実であり、イデオロギーの垣根を超えて、米国、全世界で受け入れられ、現在も多くの演奏会で取り上げられ続ける事を考えると、その影響力と魅力は底知れない。この様に、当方の興味は交響曲から入ったのであるが、ショスタコ-ヴィチが数多くの映画音楽を残している事を知ってからは、彼の映画音楽を追い求めて来た次第である。思い起こせば、はじめて彼の映画音楽を知ったのは、ロジェストヴェンスキー、モスクワ・フィルによる70年代のLP盤による新バビロン組曲であったと記憶する。現在こそ彼の映画音楽の大半が新録音され全貌が判明してきたが、当時はほぼ皆無であり、すぐに飛びついた記憶がある。しかしながら、自分的には重厚な音楽を期待していたので、鑑賞して拍子抜けした記憶がある。新バビロンは彼の映画音楽第一作、しかも 弱冠23歳で手がけた作品で、前衛に傾倒していた時期の作品故、晩年期の多くの交響曲に見られる、重厚な響きは見出せるはずがない。もっともストーリー上、ニューバビロンで繰り広げられる、狂乱じみた販売を揶揄する音楽が冒頭から導入されているわけだから、当然の話でもある。ただし、最後期の映画音楽、ハムレット、リア王からは、重厚な響きを存分に楽しむことができ、特にハムレットの音楽は出色しており、米国映画音楽作曲家バーナードハーマンも生前、自身の新録音に含めているほどである。ただし、新バビロンが作曲された1929年には傑作交響曲3番(自分的には、晩年期の作品にはない魅力を感じる)も作曲されており、一概に敬遠する必要もないと、感じている。その後、2006年 STRONBELI指揮による新バビロン全曲盤がリリースされ、当該曲に関する、見方が変わった。先のロジェストヴェンスキー盤には含まれていなかった、数々の劇音楽による描写から、その後の交響曲、映画音楽に見られる響きの一片を感じ取ったからである。本演奏会のプログラムによると70年代、ショスタコ-ヴィチに新バビロンのスコア復元、演奏の打診があったが、彼は、当該曲の作曲が未熟故、頑なに拒否したと記録されている。また、別の話として、彼の初期の交響曲は無視してほしいと、周囲に吐露したとの逸話も聞いたことがある。自己の信念を貫く作曲家として、自身の初期作品にさえも妥協を許せなかったのであろうが、皮肉にも、彼の死後、初期作品の新録音もいくつかリリースされている。本人が生きておれば、承服していないであろうが、1作でも多く、彼の作品を鑑賞したいファンとしては、まことに有難いことである。さて演奏である。オーケストラ編成は29年当時と同じ小編成で、それに合わせ、コンサートホールは、小ホールであった。本来はオーケストラピットにすべて収まって演奏されると想定されるが、今回はステージ上スクリーンの前に配置されていおり、音響効果的には良いと感じた。今回の企画は英国のREALITY なるプロダクションが、フィルム復元を含めたシネコンサートのイベントを手がけている。新バビロン全曲のシネコンサートは極めて珍しく、今回の探訪を決断した背景でもある。STRONBELI指揮盤の収録と同様に全8幕の構成で画像が映し出されている間は、ほぼすべて音楽が付けられていた。やはり、はじめての映画音楽作曲故か、映像と音楽のバランスが不自然な部分も見受けられたが、フランス政府軍とコミューンの戦闘シーンや、ジャンの苦悩を描写する劇音楽は秀逸で画像とうまくマッチしていた。ショスタコ-ヴィチが得意とする既存曲の運用も効果的で、コンサートホールでは、その点が際立った。ラマルセイユの引用に関しては、マックス スタイナーがカサブランカで効果的に使用していたが、ショスタコ-ヴィチは、すでに、映画黎明期に、使っていた事になり、改めて、その手腕に感動させられた。古い映像ではあるが、1929年当時の映画館でショスタコ-ヴィチ の音楽がどのように響いたのか、(音質は当然、格段優れているはずであるが、、)追体験できる貴重な経験になった。

 

f:id:chenstyletaiji:20190131122206j:plain 

コンサートホール Reily Auditrium 入り口にて

 

 f:id:chenstyletaiji:20190131122416j:plain  f:id:chenstyletaiji:20190131122307j:plain

 会場の雰囲気              演奏会のチラシ