映画音楽 近現代曲 コンサート探訪記

サントラファンが書く、米国オーケストラによる、映画音楽、近現代音楽演奏会探訪記録および所感。

バーナード・ハーマン 編その4 : モビーディック(短縮版) MOBY DICK (abridged) 演奏 Akron Symphony (VOL.40 ;2019年2月9日 探訪)

コンサート曲目

Barber :Adagio for Strings

Herrmann : Moby-Dick (abridged)

Others

Akron Symphony conducted by Christopher Wilkins
Timothy Culver, tenor
Brian Keith Johnson, baritone

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今回の探訪は,Akron Symphonyによる、ハーマンの声楽曲 モビーディックになる。演奏会は ”THE SOUND OF THE SEA”と海をテーマにしたコンサートで、定番であるドビュッシー”海”をプログラムの最後に配置し海洋に関する作品を、4曲取り上げて演奏する形式になっている。したがって、当該曲も、その範疇の1つとして、取り上げられたと考えるが、ハーマンの純音楽、しかも声楽作品が演奏される機会は少なく極めて貴重な演奏会であり、探訪の価値は十分あると判断した。ハーマンは声楽曲をいくつか残しているが、本曲はオペラ”嵐が丘”に並ぶ傑作で、自身指揮によるユニーコーン盤がリリースされた折には、早速入手、その劇的音楽に感動した記憶がある。これまでに幾度か演奏会が企画されていたが、いずれも、鑑賞の機会を逃しており、今回は何とか探訪し、ハーマンの迫力ある声楽をホールで鑑賞したいと考えていた。演奏会第1曲目は、ハーマンと同様、好みの作曲家、バーバーのアダージョが配されていた。当該曲と海洋の関係は直接ないが、オーケストラ背後のスクリーンには痛ましい海洋環境破壊の問題を定義するフォトエッセイが映し出されており、当該曲の有する悲壮感を共通項として表現したかったのであろう。悲壮感といえば、ハーマンのFor the fallenを思い起こす。曲想は第2次大戦戦没者を悼むものであるが、バーバーのアダージョに劣らない表現力を有する傑作だと思う。アダージョは戦争映画プラトーンのサントラにも引用され、さらに知名度が上がった名曲であるが、聴きくらべてみると理解できるが、両作曲家の特徴を良く反映している一方、ますます両曲の共通性を感じざるを得ない。ユニーコーン盤CDモビーデックのカップリング曲にはFor the fallenが収録されており、偶然の一致ではあるが、今回改めてハーマンの隠れた名曲に思いを巡らせる良い機会になった。第2曲目は、いよいよ、モビーディックである。カンタータであるが、予告にはカンタータの記載が一切なかったので、不思議に感じていたが、その理由が理解できた。実際は男性合唱を割愛し(テノール、バリトンの独唱のみ)、全体30分弱を切れ目なく連続演奏できる様、巧妙に編曲されていた。演奏時間はコンサート全体の約半分を占めることになり、今回のコンサートのメイン曲と考えてもいいだろう。ハーマン自身は承服しないだろうが、自分的には、コーラスのない本バージョンに極めて新鮮な印象を受けた。なぜなら、声楽者2名の独唱に抑えた方がハーマンの管弦楽の響きをダイレクトに楽しめるからである。結果的にハーマンが最初に想定していたオペラに近い形態になったと感じる。実際鑑賞してみて、生演奏+コンサートホールでの響きの凄さを改めて認識した、1930年代の作曲でハーマンの初期作品ではあるが、後に生み出されれる映画音楽の傑作を予見させる表現の数々はコンサートホールでは格別で感動を覚えた。最前列位置したので、独唱者および弦楽の響きの詳細を直前に感じ取ることができ、大変楽しめた。この短縮版は今後ますます演奏される可能性が高いと感じる。30分に渡り、ハーマン特有のダイナミズムとリリシズムを十分堪能し、ブラボーコールの連呼で前半の演奏会は終演した。今年2019年には、ハーマンの新録音企画として、黒衣の花嫁、CBSラジオの朗読用劇音楽(いわゆるメロドラム)がすでにリリース済みで、本演奏会を含め、ハーマンファンにとっては、幸運なイベントでの幕開けになっている。

 

 

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コンサートホールEJ Thomas hall

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   会場の雰囲気 オーケストラ後方にスクリーンが見える

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