映画音楽 近現代曲 コンサート探訪記

サントラファンが書く、米国オーケストラによる、映画音楽、近現代音楽演奏会探訪記録および所感。

ダニー エルフマン 編その1 : シザーハンズ 組曲 Suite from Edward Scissor hands   演奏 Kentucky Symphony ( VOL.41 ;2019年2月16日 探訪)

コンサート 曲目

Mason Bates : Mothership 

Fedre Grofe : Grand Canyon Suite

Samuel Barber : Concert for Violin op14

Danny Elfman : Suite from Edward Scissorhands 

 

Kentucky symphony orchestra  conducted by James R Cassidy

Sandy Cameron : Violin 

NKU Women's Chorus 

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今年は2月から3月にかけて、好みの米国作曲家作品に関する演奏会が各地で、重なり、選択に苦慮した結果、今回はケンタッキー交響楽団による演奏会探訪を実施することにした。 いずれも好みの米人作曲家である バーバー、グローフェに加え、ダニーエルフマンの作品が鑑賞できる非常にユニークなプログラムになっている。最大の魅力は、後半2曲である、バーバーのバイオリン協奏曲とエルフマンのシザーハンズ組曲が後半に配されており、その両曲のバイオリン独奏者として、サンディー キャメロンが登場するとの情報があったからである。サンディー キャメロンはエルフマンとのコラボを強めており、特に、彼女の演奏によるシザーハンズ組曲は世界各地で公開済みで,その躍動的奏法に唖然とした記憶がある。ダンサブルで派手なアクションから、クラシック系の奏者ではないと勝手に想像していたが、実際はそうでなく、正統クラシック系の奏者であると知り、さらに驚いた記憶がある。そんな中、彼女が演奏する、バーバーのバイオリン協奏曲とシザーハンズ組曲を同一コンサートで鑑賞できることは極めてユニークかつ興味深い。さて演奏会の内容である。第一曲は米国若手の作曲家メーソンベイツによる軽快な小品'Mothership"の後、グローフェによる定番グランドキャニオンである。彼の作品には、当該曲以外にも、ナイヤガラ、デスバレーの自然を描写したユニークな作品が多く、(残念ながら演奏の機会が極めて少ない)イメージを描きやすい点から、映画音楽との共通する所があり、興味のある作曲家である。今回の演奏では、オーケストラ背後に配置されたスクリーンに、組曲のテーマにあわせたキャニオンのフォトエッセイが映し出され、映画音楽的な演出が成されていた。実際本曲はディズニーの短編ドキュメンタリーのサントラに利用されているが、グローフェが本来、映画音楽として提供したものではなく、映像を後から合わせたもので、純粋な意味での映画音楽ではない。しかしながら映像をイメージしやすい音楽で、有名になった理由が理解できる。残念ながら、グローフェは映画音楽を2作しか残していないが、そのうち1作は50年代のSF映画ROKETSHIP X-M に音楽を提供しており、極めて興味深い。音楽はテレミンを使い、野心的な作品になっており、同時代に作られたSF映画Destination moon(リース スティーブンス作曲)やThe day the earth stood still (バーナード ハーマン作曲)と双肩を成す音楽になっている。当該曲は、グローフェにより組曲化および演奏会の計画があった様であるが、実現には至っていない。今後の新録音あるいは、演奏会に期待したい。後半の第一曲は、バーバーのバイオリン協奏曲でスタート。バーバーに関しては人気の作曲家ゆえ、演奏会の機会も多く、当方の好みであるため、本探訪記でも、すでに、Vol.36 でエッセイ第一番、Vol.40ではアダージョを取り上げており、今回で3回目になる。彼の音楽は繊細、優美さを有する一方、エネルギッシュかつ劇的な響きを有しており(バレー音楽、オペラも魅力的な作品が多い)個人的にも、その点ゆえに彼の音楽に魅了されてきた。当該バイオリン協奏曲も1,2楽章と3楽章の緩急対比が際立つ魅力的な作品である。本作品を、ダニーエルフマンの秘蔵子、サンディー キャメロンがどのように料理するのか興味深い。独奏をつぶさに観察するため、ステージ左前方に位置した。いよいよ、指揮者James R Cassidy とともにサンディー キャメロンが登場し演奏である。曲の作風から落ち着いた衣装での登場を予想していたが、実際は、かなり派手で驚いた、彼女のキャラを反映しているのだろう。演奏はある程度予想していたが、1,2楽章からかなり動きが激しくダンサブルで優美さよりも、その情熱、気迫を感じた。この点が、エンターテイナー奏者としての魅力であろうが、好き嫌いが分かれるのではないかと思う。技巧が問われる3楽章も、難なく、かつ、ダイナミックな奏法は曲にうまくマッチしておりバーバーの魅力を十分満喫できた。癖のある奏者ではあるが、実力派奏者であることは確かである。次にエルフマンのシザーハンズ組曲である。エルフマンの作品に関しては、映画音楽作品よりも彼の管弦楽作品(SERNEADA/SCHIZOPHRANA)に魅了され着目してきた作曲家である。彼得意の女性合唱をうまく使用した作品で、映画音楽で培ったテクニックとコンベンショナルな管弦楽を融合したユニークな作品である。大きく共感できるのは、彼が憧憬する作曲家としてバーナード ハーマンやショスタコ-ヴィチ等の現代管弦楽曲に傾倒している事を公言している点である。ポップバンドを率いてきた経歴からは想像しがたい事であるが、数々の映画音楽傑作を生み出してきた背景には、このような背景が大きく影響していたのであろう。さて演奏である。20名程度であるが、女性合唱団がオーケストラ背後に配され華やかな印象を与えている。本曲の魅力は、このコーラスによるところが圧倒的に大きいと思う。毎度の事ではあるが、映画とは独立に鑑賞しても癒される名曲であると痛感する。そして、サンディー キャメロンが、今度は、お決まりのシザーハンズをイメージした衣装に身を包み再登場。バーバーのバイオリン協奏曲演奏時よりさらにヒートアップした演奏を披露した。今回の舞台(小編成オケ)は小さく近くにいるオーケストラの弦楽奏者たちと極めて近接しており、接触しそうで、ヒヤヒヤさせる場面もあったが、無事終了し、会場を盛り上げた。そして、最後は女声合唱により静かに終演した。エルフマンに関しては、従来の既成概念にとらわれない、エルフマンスタイルの現代管弦楽曲の発信コンセプトを有している様で、最近リリースされた、新作のバイオリン協奏曲もその流れの1つの様である。キャメロンを独奏者として各地でツアーが、いくつか計画されており、機会があれば探訪してみたい作品である。今回のオーケストラ、ケンタッキーシンフォニーは地方のオーケストラであるが、サンディー キャメロンのような著名アーティストを招聘し、かつ、今回の様な魅力的なプログラムをリーズナブルな価格で提供しており、音楽ファンとしては、大変恵まれた環境と言える。

 

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大学キャンパス内のコンサートホール(Greaves Concert Hall) 

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会場の雰囲気(映像表示用スクリーンが見える)