映画音楽 近現代曲 コンサート探訪記

サントラファンが書く、米国オーケストラによる、映画音楽、近現代音楽演奏会探訪記録および所感。

レナード ローゼンマン 編その1:理由なき反抗 (全曲) Rebel without a cause (Complete) 演奏 Cleveland Orchestra クリーブランド管弦楽団  ( VOL.42 ;2019年2月23日 探訪)

コンサート曲目

Leonard Rosenman : Rebel without a cause (Complete)
The Cleveland Orchestra
Scott Dunn, conductor
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今回のコンサートは当方にとって、待望のシネコンサートで、作品はレナード ローゼンマンの”理由なき反抗”になる。ローゼンマンに関しては好みの作曲家の1人で、これまでリリースされたサントラは、できる限りコレクションとして収集してきた。ローゼンマンの音楽は、師であるロジャーセッションズ(比較的、明解な作品を生み出す、米国作曲家達とは異なり、より前衛的な作品を多く作曲している。ただし、個人的には、好みの曲は少ないが、、)シエーンベルグの影響で、無調無機質なシュールな響き(いわゆる12音技法)を好んで多用しており、そのためか、よりSF、サスペンス映画に音楽を付けるケースが多い。当方の彼への興味も、そこからスタートしたと記憶する。しかしながら、登場人物の感情表現も卓越しており、TV作品にも効果的な劇音楽を提供しており広範囲な作品群を鑑賞できる。この点に関して、当方が始めて、痛感させられたのは、70年代のTVドラマ、ドクターウエルビーの音楽である。TV向けの劇音楽としては、コンバットに次ぎ多くのエピソードに音楽を付けているので、彼にとって、重要な作品に当たるだろう。初めてこのドラマを観た時、動きの少ない、医療ドラマにもかかわらず、難しい状況に置かれた登場人物の複雑な感情を巧みに表現する音楽が巧妙で、作曲は誰か?と考えていた。その後エンディングで聞き覚えのあるコーダが流れると同時に、ローゼンマンのクレジットが現れ、やはりそうだったかと、感心した記憶がある。(この特徴あるコーダはローゼンマンを象徴するもので、彼のほとんどの作品に使用されている。)この様に、ローゼンマンの作品は、音楽の動静の両方において、巧みに作曲されており、その点を、十分楽しめる傑作の1つが、今回の”理由なき反抗”に付けた音楽と感じている。ローゼンマンのキャリアーの中でも、最初期に作曲された、才気煥発かつ野心的な作品に仕上がっている。本来、純音楽のコンサート コンポーザーとして活躍していたローゼンマンである、本作品も妥協なく、完成度が高いため、コンサートホールでの演奏に十分耐えうるレベルであり、将来、単独の演奏会が企画されないかと、大いに期待していた次第であるが、やっとそれが実現したのである。しかも演奏は名門クリーブランドオーケストラで音響効果抜群のSEVERANCE HALL での生演奏は、サントラファンとしては夢のような企画である。本作品(”理由なき反抗”シネコンサート)は2016年に、今回の指揮者Scott Dunnがロスフィルにて世界初演してから、2回目の演奏になる。演奏機会の極めて少ない貴重な演奏会で本曲を選択した名門クリーブランドオーケストラの趣味の良さを感じさせる。当該作品で当方保有、愛聴のサントラ(新録音)としては、93年にWilliam Motzing 指揮Czech symphony、97年にJohn Adams(vol.36 でも言及した米国作曲家)指揮London sinfonietta による演奏がリリースされている。両盤とも演奏、録音はともにすばらしい。特にWilliam Motzing 盤は、ほぼ全曲が網羅されており貴重な録音である。William Motzing 盤の繰り返し鑑賞で全貌は把握していたが、今回の生演奏には度肝を抜かされた。あえて表現すると、驚嘆の1言に尽きる。ローゼンマンの楽曲の生演奏は新鮮で、当たり前ではあるが、CDとはまったく異なった音楽に聞こえる。さて演奏である。フルオーケストラとサクソフォーンによるシンフォニックジャズの滑り出しから、たたみかける様に、ローゼンマン得意の変速かつ前衛的表現によるジムのテーマがseverance ホールに響き渡ったと思った瞬間、一変して弦楽による、あの有名かつセンチメンタルなラブテーマ曲が流れた。この最初の数分で腰を抜かされた。それほどクリーブランドオーケストラが奏でるローゼンマンの音楽は格別に聞こえたのである。ローゼンマンの音楽は、ホールにおいて、こんなに凄い響きを有していたんだと、改めて感心した次第である。その後の目玉は宇宙を表現する神秘的な、プラネタリューム内での音楽だろう、ミクロの決死圏等、後の傑作SF音楽を予見させる、ローゼンマン真骨頂の音楽である。コンサートホールでの響きは、まさにプラネタリュームを連想させる共通性があり興味深い瞬間であった。本作での最大の山場は、ジムとバズによるナイフ決闘およびチキンレースの場面に付けられた、迫力の劇音楽である。急激な弦楽と管楽器群の咆哮が極めて複雑に絡み合う、疾風怒涛の演奏で、ホール内での響きは、まさに圧巻。後半は、オーケストラによる、うねるような弦楽による心理描写が秀逸な部分であるが、ステージ最前列に陣取ったおかげで、さらによく聞き取ることができるとともに、弦楽奏者が巧妙に裁いていく様子を観察できた。ローゼンマン一流の繊細かつ複雑な感情表現を十分堪能した後、プラトーが追われる迫力の音楽ではさらに複雑、変速的な緊張感を盛り上げる音楽が、ホールで効果的に響いた。そして、悲劇の終末を締めくくる音楽に。最後にローゼンマン特有の雄大なエンドコーダが会場内に、大きく鳴り響き、大きな感動とともに終幕した。ローゼンマンの音楽に惚れ直す、すばらしいシネコンサートになった。今回の指揮者Scott Dunnはなんと、ローゼンマンとリチャード・ロドニー・ベネットから作曲の教授を受けており、特にローゼンマンとの親交が深かったようである。今回の様な、すばらしい演奏を提供できたのも、弟子としてローゼンマンの音楽の魅力を十分熟知していたからに違いない。
PS :ちょうど本ブログ更新時、ローゼンマンが作曲を手がけた、ロボコップ2の長尺盤サントラ発売の情報が舞い込んできた。偶然の一致ではあるが、ファンにとってはうれしいニュースであるため、追記しておきたい。

 

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銘版の下に演奏会のチラシを置いてみた。   会場の雰囲気