映画音楽 近現代曲 コンサート探訪記

サントラファンが書く、米国オーケストラによる、映画音楽、近現代音楽演奏会探訪記録および所感。

ヴォーン ウィリアムズ編その1: ”未知の国へ” Toward the Unknown Region  演奏 Cincinnati Symphony Orchestra シンシナティ交響楽団 ( VOL.44 ;2019年5月17日 探訪)

コンサート曲目

Ralph Vaughan Williams :Toward the Unknown Region 

Others

Cincinnati Symphony Orchestra

May Festival Chorus

Conducted by Juanjo Mena

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今回は、シンシナティー交響楽団による、特別企画”MAY FESTIVAL"の探訪になる。この企画は声楽作品、しかも混声合唱が必要な作品群の演奏に特化したユニークなコンサートである。(1ヶ月間にわたり7回の演奏会を実施する贅沢な企画になっている)前号”未知との遭遇シネコンサート”で言及した声楽の魅力と重要性について言及したばかりであるが、今回もその声楽がキーワードの探訪になる。今回着目したのは、英国の作曲家、ヴォーン・ウィリアムズの声楽作品”未知の国へ”が取り上げられていたからだ。ヴォーン・ウィリアムズに関しては、英国映画にユニークな作品群を残しており、これまでリリースされた、新録音により(特にBBC PHIL+Gamba指揮による,全3巻に及ぶ新録音は作品の内容および録音、演奏ともに出色しており、愛聴盤になっている)ほぼすべての映画音楽作品を楽しむことができる。英国映画音楽の新録音企画に関しては、過去たびたび実施されており、英国音楽界に名を残した、ウイリアム・オルウイン、マルコム・アーノルド、ウイリアム ウオルトン、アーノルド・バックス、コンスタント・ランバート、アーサー・ブリス,ベンジャミン・フランケル、等とともに、必ず取り上げられる作曲家の1人である。いずれの作曲家も1930年ごろから1970年頃までに活躍した世代で、米国においては、コーンゴールド、スタイナー、ワックスマン等々のハリウッド黄金期の映画音楽作曲家の活躍時期と重なることが興味深い。いずれの作曲家の作品も、米国の映画音楽と比べて遜色ない魅力的な作品が多く、栄華を極めるハリウッドを横目に、ハイレベルな作品群を、黙々と残した英国作曲家達に敬意を表したい。ヴォーン・ウィリアムズは老境に入ってから、映画音楽の作曲を開始しているが、興味深い作品が多い。49th parallel が有名かつ感動的な作品であるが、交響曲に引用された Scott of the antarcticもユニークな作品である。この作品では特に声楽が効果的に使用されており、声楽を上手く使う作曲家であると感じてきた。したがって、本格的声楽作品”未知の国へ”は、彼の声楽に対する手腕を楽しめる良い機会である。さらに、本曲のコンサートでの演奏機会は比較的少なく、探訪価値は十分あると考えた。本作は1906年作で米国の詩人Walt Whitman の作品を引用(興味深いことに、当方好みの米国作曲家バーナード ハーマンもWalt Whitman 作品を引用した、朗読付管弦楽作品をラジオ向けに残している。)したものであるが、管弦楽+声楽のゴージャスな響きは、まさに、コンサートホールで鑑賞してこそ、得られる貴重な体験になる。さて演奏である。10分強の小品であるが、100名を越す混声合唱による響きは圧巻。1906年作であるが、後に作曲された、40年、50年代の映画音楽作品の響きを、十分感じ取ることができる。Walt Whitman 独特の世界観による、未知の世界に赴く不安と恐怖に対する勇気を荘厳に歌い上げる、クライマックスには、癒される思いである。音楽から元気をもらった貴重な演奏会になった。

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ユニークな表紙を有する演奏会プログラム冊子     ホール内に垂れ幕も見える

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オーケストラ後方に大合唱団が見える